読書したらトリップするなんて誰が思う?
□第零章
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prologue
俺は本の虫と馬鹿にされるくらいには本が好きだった。元々本は好きだったが、大人になってからはそれに拍車がかかった気がする。『3連休? 何それおいしいの?』な職場や、一々ウザい同居人、そして同居人の友人と俺で腐った妄想をしてくる姉。
心地好くもあったが至極面倒な現実から逃げられる、唯一の手段だったのもあるんだろう。
だから俺の休日のやることは、勿論読書だ。現に今もこうして、本を読んでいる。今呼んでいるのは本屋の隅にあった推理小説で、探偵の主人公が依頼を請け負い解決するという、よくある設定の推理小説だ。
――失敗したか? とよくあるような設定を見て思ったが、嬉しい事にその予想は違ったようで。キャラクターが活き活きと輝いているし、展開もよく凝られている。かと言って長すぎる事も無く、短かすぎる事も無く、ちょうどいい長さで、どんどん次へと読み進めてしまった。
そしてとうとう、ものの二十分ほどで推理編にまで来た。――あと少しでこの犯人が分かる......!! 高揚した心境のまま、俺はそっと次の頁に手をかけた。
その瞬間全てが変わったのです
「...ふ、ふざけんなああああ!!」
(目の前には大きな森が)
(なんて、何処のおとぎ話だ)