『消えた光』

□8.足音
1ページ/1ページ








"愛してるよ……ずっと君を見てる"







いつからだったかな?

手紙の内容が変わったのは。




エドワードは虚ろな瞳で目の前に開かれたいくつもの手紙を見た。

気付けば応援の手紙から愛してる……と言った手紙に変わっていた。

これを送ってくる奴は何を考えてるのだろうか?

嫌がらせにしては手が込んでいる。


毎日毎日……

暇なのだろうか?


そんな疑問すら湧いてくる。






「ふぅ――……」





そろそろ時間だ。

遅れたら心配性の中将が仕事を放りだしてここに来かねない。

別に中将が撃たれようが構わないが、銃弾がもったいない。


何気に酷いことを思いながら、エドワードは手紙1枚1枚元通りにしまうと、Boxの中に入れた。

既にこの手紙用のBoxは3箱目に突入している。

未だに手紙や電話のことを中将やキングにいていなかった。


心配かけたくない。

それでなくとも、テロやハイジャックで大忙しなのだ、中央は。

中将になったロイの仕事も増えている。


きっと中将たちのことだ。

こんなのが来てるとわかれば、テロやハイジャックなんかよりこっちを優先するに違いない。

それがうぬぼれじゃなくて、事実だから余計に始末に負えない。





「大丈夫……私は大丈夫……」




呪文のようにそう唱える。

大丈夫だと言い聞かせてる時点で大丈夫じゃないということにエドワードは気づかない。




「もしかしたら前に住んでた人に対してかもしれないし……」




手紙の1行目に"鋼の錬金術師様"と記されているのだが、エドワードはそれから目を背けた。

現実逃避しないと冷静ではいられなかったのだ。





「よしっ!」





全てBoxに直し終えたエドワードは、Boxを視界に入れないようにしながら家を出た。

向かう先は中央司令部―――










前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ