『消えた光』
□3.危機感
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「やっぱり君かね、鋼の」
「遅かったな。もっと早く来るべきだろ?」
「あいにく、ニール少尉は言ったからな。ハイジャックが"あった"とそうです、と」
普通なら、起こりました、もしくは発生しました、だ。
あった、なんてすでに過去形になっている。
……これはエドワードがセントラルで生活を始めてからできた言葉の違い。
やっぱりエドワードはエドワードだ。
エドワードの行くところに事件あり。
そして自由なエドはそれこそ自由に解決してくれる。
あれだけ危険なことには首を突っ込むなと言ったというのに。
「もう何十回目になるかわからんが、君は女の子なんだ。守るなとは言わん。だが、男ばっかりのところに一人で入るな。
頼むから応援を待てくれ……」
危機感が全くと言っていいほどないエドに、口が酸っぱくなるほど言ってきたロイ。
一応その時は分かったというエド。
……それでも首を突っ込んで自ら向かっていくことを辞めない。
「わかった。次からは気を付ける」
「はぁー……一体何回目だね?その言葉。……君の耳はお飾りかね?」
「仕方ねぇーだろ!身体が反応するんだから!
それに……放っておけるかよ!!」
エドワードの言いたいことは分かる。
分かるが、それとこれとは別なのだ。
どういったらそれが伝わるのか。
エドワードが強いのは分かってる。
でも、そういうのじゃなくて……
「君が傷でも負おうものなら、アルフォンス君が般若のごとく駆けつけてくるぞ?」
「うっ……」
相変わらず弟には弱い姉だ。
アルフォンスを呼んで言い聞かせてもらわなければいけない。
……まぁ、もって一週間かもしれないが。
「まぁ、いい。すまないが事情聴取に付き合ってもらうが……いいか?」
「ん、了解」
エドワードは素直に頷くとロイたちの車に乗った。
「ハァー……」
「結局、またエドワード君に頼ってしまいましたね」
「全くだ。これじゃあ、休暇を与えてる意味がない……」
「どうぜその後もついでだからって俺らの手伝いしてくれるんでしょうね」
エドワードをよく知る面々は、大きくため息をつくと、少しでも早く彼女を解放できるように走り回るのだった。
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