『消えた光』
□2.心の余裕
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アルトウィンリィの結婚式も無事終わり、エドはセントラルに家を借りた。
最後の最後まで一緒に住もうと駄々を捏ねた大総統を子供を相手するように言い聞かせ、(最後は無理やり)黙らせた(ここ、ポイント)。
中央司令部と大総統のほぼ真ん中に位置する7LDKの一軒家。
そんなデカいのいらない!というエドの意見は通らず、またリゼンブールから運んだエドの本を入れると、
ちょうどいい大きさだったため、気づけば勝手に契約されていた。
契約した以上仕方ないと早々に諦めたエドは自分が棲みやすいようにとダイニングとリビングを一つにした(もちろん許可をもらって)。
新しく揃えようとしていた家具はキングとロイが勝手に揃えて、エドが気づいた頃にはほぼ一通り家の中に設置済みになっていた。
せめて家具代でも、と休暇をフルに使って体を休めながらロイたちの仕事の手伝いをしようと心に決めたのは内緒だ。
(つまり、家具代は受け取ってもらえなかった)
中央司令部に行くときは鋼の錬金術師だと分かりやすいように旅をしていた時と同じ格好をする。
それに軍人ではなく、あくまで軍属だから、公式の時以外は軍服を着る必要もない。
中央司令部に入ると、少しだけ周りが騒がしくなる。
キングの養女になったことは元東方司令部のマスタング組とキングの側近たちしか知らない。
だからそこまで騒がれることはない。
……となると理由は一つ。
(いったいこれだけの中に鋼の錬金術師が女だって知ってるんだろうな)
と、たまたま近くを通りがかっていたハボックは思った。
良くも悪くも鋼の錬金術師の名は有名だ。
旅をしてる頃もあちこちの司令部関係で注目を浴びていた。
「おっ、エド!また来たのか?」
「またって……来ないほうがよかった?」
Yesと言わないことを知っていながらイジワルするようにそう聞く。
マスタング組としている会話の一つだ。
「んなことねぇーよ。お前のおかげで中将の仕事も捗るし、何より俺たちが定時で帰れる」
力強くそういうハボックに、エドワードは思わず笑う。
ロイの脱走はそれなりに聞いて知っていたが、そこまで力説するほどひどかったということが、何かおかしい。
「どんだけ酷かったんだよ」
「そりゃ、毎日が残業で、大尉の銃弾が毎日2発ずつは必ずなくなるぐらい」
ホークアイ中尉は大尉になった。
そしてハボック少尉も今や少佐。
こういう時、やっぱり時間は流れたんだな……としみじみ思う。
昔はそれを感じる余裕もなかったから……
「助っ人が来たぜー」
「よっしゃー!!」
「助かった〜っっ!」
「うおっ……なんか……すごいな……」
入った瞬間、盛大に歓迎され、エドワードは目を白黒させる。
全員の机の上の半分以上が紙の山で埋まっていた。
恐らくそれの半分以上が上からの激励の仕事だろう。
――自分の仕事を他人に押し付けるようなやつがよく将軍を務められるもんだ……。
ヘンに感心しながらすでにエドワードの席になってる場所に座った。
あんまり長くいるとなぜか全員から怒られるので、だいたい来てから3,4時間だけの助っ人になる。
……集中がよすぎるため、結局気づけば5時間ぐらいたってることがほとんどだが。
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