Pocket Monster!
□リスペクト!
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「ぴーか、ぴーかちゅ!」
「るりるりぃ…」
ポケモンセンターのレストランでご飯を食べているときだった。
べったりとくっつきながら、遠慮なしに辺りにハートを撒き散らしながら仲良く一緒にポケモンフードを頬張るサトシのピカチュウとミウのルリリ。
「ねえ、ピカチュウとルリリって恋人になったのカモ!」
「え、えぇ!?」
「ふぉいひふぉ?」
いつしか主も知らぬうちにこのような関係になっていたピカチュウとルリリ。サトシは呑気にパンを頬張りながらハルカの言葉を聞き流した。きっと彼は恋人?と言いたかったはずだ。
「ミウとサトシは恋人だし、きっとあなたたちのパートナーも惹かれあったのよ!主もパートナーも恋人同士って、なんだかロマンティックかも〜…!」
「まあ、それは一理あるかもしれないな。」
「ええ、すごーい!」
ハルカの妄想を苦笑で流していたミウも、タケシが肯定してしまうとは思ってもいなかった。そのお陰でマサトも感心している。
「そんなことってあるんだね」
「なにが?」
「さっきの話、聞いてなかったの?」
うん、と真顔で言い返してくるサトシを呆れつつもハルカが言っていたことをそのまま教えた。
するとサトシは少し興味深そうにピカチュウとルリリの方に視線を向けた。
「ぴかぴぃ、ぴかちゅ、」
「るりりぃ、るりっ、」
相変わらずのハートの撒き散らしようだ。サトシもこれには苦笑を浮かべた。
レストランで夕食後、一行はそのままポケモンセンターで宿泊することにした。
しかしその日は宿泊客が多く、大部屋がとれず2人部屋と3人部屋に分かれることに。
もちろん恋人同士であるミウとサトシが2人部屋に、ハルカ、マサト、タケシで3人部屋を使うことは誰が言わずとも暗黙の了解であった。
ミウはベッドで相変わらずイチャイチャしているピカチュウとルリリを見つめる。本当にいつからなのだろうと考える。確かにピカチュウとルリリの仲は長く、親しいのはだいぶ前から知っていた。
サトシもミウと同様に微笑ましそうにイチャイチャする2体のポケモンを見つめていた。
「いつからなんだろうね」
「本当だな、」
2人和みながら、会話をしていたときだった。
「ぴーか、ぴかぴぃか、」
「る、るりり、るりぃ…、」
ピカチュウとルリリの辺りに飛び散っていたハートがなくなったかと思えば、2体はしんみりとしたムードを漂わせた。何このムード…と心の中で突っ込んだミウに、更なる衝撃が待ち受けようとしたのは知らない。
「ぴーか…、」
「るり…、」
頬を赤く染め、くりくりとした目を細くして、2体――いや、2人はどんどん顔と顔の距離を更に近付けていく。その距離は止まらず、ついに0に。そう、0になった。ミウとサトシの目は言わずもがな点になる。
「な、何してんの、ルリリっ」
「おいピカチュウ、人前でそういうのはするもんじゃないだろ!」
「え、そこ!?いや、あながち間違ってはないというか…」
すぐさま我に戻った主たちはお互いパートナーを自らの腕に優しく閉じ込めた。
しかし不満そうに2体はジタバタとする。本当にどうしたものなのか。
同時に2体を離すと、また2体はくっつき合った。
「ポケモンでもこんなにイチャイチャするもんなんだね…」
「……、」
「…サトシ?どうかしたの?」
「俺らも…いいだろ?」
「は、恥ずかしいって、」
「あいつらは見てないから大丈夫だって、」
そう言いながら、サトシは彼女の右手を握り、指を絡める。そして、サトシの顔がだんだんと私の顔に近付いてくる。ちょっと、ちょっと!心の準備が整ってないってば!
「いい?」
「えっ、う、うん…、」
お互いの唇が重なる…その寸前だった。
「…ぴか」
「…るり」
さっきまでイチャイチャしていたピカチュウとルリリの視線が痛いほど突き刺さっていることに気が付きミウとサトシはすぐさま離れる。
「ちょ、お前ら、いつから見てたんだよ!」
「や、やだ、は、恥ずかしい…」
「ぴぃーか?」
「るりるり?」
2体してドヤ顔をミウとサトシに向けながら、もう1度2体は堂々とイチャイチャを再開させた。
リスペクト!
あいつらの堂々さには、まさにその言葉だけ。