長夢〜願いはたった一つ〜
□新撰組での生活開始
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朝餉を持ってきてくれたのかな?と思っていたら何も手にしていない原田さん。私は不思議になって見つめた。
『原田さん、どうしたんですか?』
「あぁ、今日から広間で食事していいことになったんで迎えにきたんだ。」
『え??でも・・・いいんでしょうか?』
予想もしてなかった答えに私は少し戸惑う。
「食事ってのは大勢で食べたほうがうまいだろ?ほら行くぞ!千鶴も」
「早くしねーと平助と新八に全部食われちまうぞ?」
原田さんの話に千鶴ちゃんは慌てて部屋を後にする。
私はまだどうしていいかわからず戸惑いの顔をしていた。
「なんだ、嫌か?」
そんな私の顔をどう受け取ったか原田さんは私の顔を覗き込んだ。
『あっ、いえ・・・私あまり皆で食事ってしたことなくて・・・あとこの髪じゃぁさすがに出れないです・・・。』
私は苦笑いしながら自分の髪を梳いた。
「あぁ、そのことなら・・・。ほらよ。」
原田さんはそういうと髪紐を差し出した。
『え?これは・・・』
私は目を丸くする。
「ほら、あれ・・・ゴムだったか?あれじゃぁ少し目立つからな。俺の予備で悪いがやるよ!」
『す、すみません・・・。』
私は恥ずかしくなってうつむく。
「じっとしてろよ?」
『???』
パッと顔を上げると目の前には原田さんの喉元。原田さんはそのまま私を包み込むように私の髪を手で梳かし結う。
「ほら!」
原田さんは髪をまとめあげると満足げに私に笑いかけた。
『わぁ...ありがとうございます。』
私は綺麗に結ばれていることが嬉しくなり、お礼をいった。
『・・・でもやっぱり邪魔ですよね・・・切りましょうか・・・?』
髪をおろせば腰まである私の髪はポニーテールみたいに高く結んでもやっぱり長く邪魔だった。
「!!!だめだっっ!!」
原田さんはあせったように真剣な目で私を制した。
『え?』
突然のことで私は目を丸くする。
「あ・・・いや、わりぃ・・・」
原田さんは少し頬を染めバツが悪そうにそっぽを向く。
私はその様子にも首をかしげると原田さんは私の耳元でささやいた。
「綺麗な髪なんだから切るなよ・・・俺からの・・・お願いだ。」
『.........そうですかぁ?ならそうしますねぇ?』
私は原田さんの言葉ににっり微笑う。
原田さんはちょっと目を丸くしたが少し笑みをこぼし私の頭に手を置きポンポンとする。
「約束な。」
『はい〜約束ですね!』
そういって広間に向かう原田さんに私は原田さんの後を追った。
(変わった女だな...)