長夢〜願いはたった一つ〜


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京の都にある無数の裏道の一つ、油小路。

私たちは身を潜めて彼をまった。


「そろそろだな・・・」

永倉さんがつぶやくと私と千鶴ちゃんはぎゅっと唇をかみ締める。


「・・・辛いなら見る必要はないんだ。別の方を向いていたほうがいい。」

原田さんが私たちを気にかける。
千鶴ちゃんは頭を横にふった。

「いいえ。平助君を助けられる唯一の方法なら・・・逃げません。」

千鶴ちゃんの言葉にはしっかり意志が通っていた。



月が位置を変え始めた頃・・・

彼らがやってきた。


伊東さんの遺体のもとに御陵衛士の人たちが駆けつける。

その中に平助くんの姿もあった。


彼の姿に前みたいな明るい表情はうかがえなかった。

「・・・行くぞ」
永倉さんの合図とともに私たちは彼らの周りを囲った。

私たちの姿をみた平助君はつぶやいたが衛士の怒鳴り声でかき消されそれと同時に一発の銃声がなった。


衛士は戸惑っている。
私たちは皆いっせいに後ろにいる二つの影をみた。

「よぉ!頭の悪い新撰組ともっと頭の悪い御陵衛士が罠にはまるのを見物しにきてやったぜ。」
相変わらずの軽口調の不知火さん。そしてとなりに天霧さん。

「まさか姫さんまでいるとは思わなかったけどな。」

不知火さんは合図をするように片手を挙げるとすごい数の浪士が辺りを囲んだ。


『・・・・どこにこんな数・・・』

「風体からして薩摩の連中か?」


「不意をつくような真似はわびましょう。我々も藩命に従う必要があるのです。」


「まぁ、長州と薩摩は仲良しこよしなんだな。てめぇの心配しろよ?」
不知火さんが言うと包囲が狭まる。


御陵衛士が不知火さんに叫ぶ。
話を聞くと、やっぱり坂本龍馬暗殺の犯人を流したのは御陵衛士だった。

不知火さんは平然と御陵衛士の人に銃を向けて発砲する。

「口封じのためにお前ら殺しちまうのが一番簡単だろ?」

私たちは刀を構えた。

天霧さんが冷静に話し始めた。
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