長夢〜願いはたった一つ〜
□秘密
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年が明け元治二年2月
私がこの時代にきてから半年以上たった。
ここの生活にも慣れ男装もだいぶ板についてきた頃...
新撰組はというと隊士希望者はどんどん増え屯所は狭くなっていて今も屯所移転の話し合い中。
部屋に入り千鶴ちゃんとお茶を配る。
「八木さんたちにも世話になったがこの屯所もそろそろ手狭だな。」
土方さんが腕を抱えてぼやく。
「まぁ、確かに狭くなってきたなぁ。隊士の数もだいぶ増えたし・・・」
永倉さんがお茶を飲みながら答える。
「平助君も江戸で新しい隊士さん募ってくれていますしね!!」
千鶴ちゃんが沖田さんにわたしながら話しに入る。
『そうね!まだまだ増えそうね。』
私もうなずく。
「広いところに移れるならそれがいいんだけどな。雑魚寝している連中もかなりつらそうだし・・・」
そう、屯所内で個室をもらえているのは幹部隊士だけであり、平隊士の人たちはすし詰め状態で雑魚寝していてちょっと寝苦しそう。
しょうがない理由があっても個室を二人で使っている私と千鶴ちゃんは心が痛かった。
「西本願寺」
土方さんがつぶやく。
「それ、絶対嫌がられるじゃないですか!!」
沖田さんは大笑いする。
私と千鶴ちゃんはどんな場所なのか分からずきょとんと顔を見合わせた。
私と千鶴ちゃんの考えてることが分かるのか原田さんと斉藤さんが説明してくれた。
西本願寺は長州に協力的で何度か浪士をかくまっていたそう。そして広さも申し分なく立地条件もこの屯所よりもずっといいそう。
敵の動きも抑えられるなら相当いいんでしょうねぇ。
そう一人納得していると山南さんはとても苦い顔をしていた。
「僧侶の動きを武力で押し付けるなど・・・見苦しいとは思いませんか?過激な浪士を抑える必要があるという点には同意ですが・・・」
「歳の意見ももっともだが、山南君の意見も一理あるな・・・」
近藤さんはうなった。そこに口を挟んだ。
「さすがは近藤局長。敵にまで配慮なさるとは懐が深いですわね!」
このおねぇ言葉の人は伊東甲子太郎 参謀。
新撰組に新たに入隊した大幹部だ。
伊東さんは平助くんや山南さんとも親交のある剣道道場の先生らしい。
皆はあまり伊東さんのことをよく思っていないようだ。
私もその一人で彼の独特の雰囲気というか癖が強い・・そんなところが苦手だった。
そんな彼が山南さんを侮辱した。