長夢〜願いはたった一つ〜
□池田屋事件
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古高の自白から
風の強い日を選んで京の都に火を放ちあわよくば天皇を長州へ連れ出す。
というとんでもない狙いが判明した。
そして会合が今夜行われている可能性が高いことも。
隊士はみんな出動準備をしていて屯所内は騒がしかった。
そっと廊下をのぞくと皆がばたばた走り回っている。
途中永倉さんが部屋の前を通り心配したと声をかけてくれ、私は笑顔で返したが空気はどこかぴりぴりと張り詰めていた。
そんな空気のなか千鶴ちゃんと顔を見合わせながらお互い苦笑いした。
居心地が悪いと千鶴ちゃんも同じ気持ちなのだろう。
土方さんに私と千鶴ちゃん、そして山南さんと体調の悪い隊士たちは屯所待機なのだけどなぜかそわそわしてしまう。
『落ち着かないですねぇ・・・』
「そうですね・・・秋月さん具合は大丈夫ですか?」
『ありがとう。もう大丈夫よ。千鶴ちゃんも無事で本当によかった。』
千鶴ちゃんの優しい気遣いに私は笑顔で応える。
そろそろ出発するらしい音を耳にして千鶴ちゃんと一緒に玄関にいくと、浅葱色の隊服を羽織って鉢金を巻いた皆が立っていた。
私たちの後ろには一緒に待機してくれる山南さんがいて
「留守は預かりましたよ。」
「あぁ、こいつらのことも頼んだ。」
と土方さんは山南さんに挨拶をする。
「じゃぁ、いってくるなーー!!」
平助くんは元気に私たちに向かって手を振ってくれる。
皆が玄関から出ていこうとしたときに私は変な不安に陥ってとっさに原田さんの隊服を掴んでしまった。
「ん?」
原田さんが私のほうをむく。私はやってしまった・・・と力なく掴んだ手を離す。
『あ、あの・・・気をつけてください・・・。』
なんていっていいかわからずそれだけ伝えて私はうつむいた。
原田さんはまたポンポンと私の頭に手をやり「心配するな。」と目を細めて屯所を出て行った。