長夢〜死神が落ちてきた〜
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土方さんたちが大阪に向かって10日ほどが経った。
ここに来て約半月、やっとここの生活にも慣れてきた。斎藤さんのことも稽古をつけてもらう内にはじめくんと呼ぶのを許可してくれた。
なぜはじめくんかと言うと、新選組の中じゃ平助と同じぐらい歳が近いからか、くん付けがしっくりきたから。
そんなある日の屯所内...。
「総司ッッ!!!やーめーろーーー!!」
「うるさいよ、平助。」
台所から平助の叫び声が聞こえてきて私と千鶴ちゃんは思わず顔を見合わせて台所を覗きこんだ。
『二人とも、何やってるの?』
「結愛!千鶴!総司を止めてくれッッ!」
『「へ?」』
平助の必死な訴えに千鶴ちゃんと声がハモる。
その言葉に総司さんは手を止めつまんなそうにため息をつく。
「あーぁ、人がせっかくやる気になってたのにさ。」
話を聞けば炊事当番の平助と総司さん。平助はお味噌汁を総司さんは芋煮を作っていたらしい。がしかし総司さんは芋煮の鍋に醤油を大量にいれようとしていて、平助がそれをとめようとしていた所に私たちがやって来た。ということらしい。
いやいやいや。塩分過多で体壊すよ!
あぁ、この間のやけに辛いお浸しは総司さんだったんだ...。
隣の千鶴ちゃんを見れば、思った通り顔がひきつっている。
ちらっと見ればすでに結構な量の醤油がはいっている。
『......んー...総司さん、すでにちょっといれすぎかな。』
苦笑いを浮かべると総司さんはいたずらっ子のように「そう?」と言いながらニヤッと笑った。
『もう...食材を粗末にしちゃダメですよ!えーっと...この時代にある調味料は?』
「え!?あっ!こ、これだ!」
平助の方を向けばかごに入った大小様々な容器に入った調味料たち。
一つ一つ味見をしながら確かめていく。
『んー...砂糖はないか。あ、でもはちみつがある...』
ふむふむと味付けの構想を考えている私を三人は目を見開いて見ていた。
『よし、これとこれとこれ!』
私は酒とみりんとハチミツの瓶を取り鍋にどんどんいれていく。
「ねぇ、大丈夫なの?」
『大丈夫ですよー!こう見えて料理は得意だったんですから!』
元の時代でも昔から一人だった私は一護パパのお手伝いでよく料理をしていた。
「ふーん。」と総司さんは頷く。熱が通りやすいようにジャガイモを半分に切り鍋にいれ、一回り小さい蓋で落し蓋をする。
「おい、結愛!蓋の大きさ合ってないぜ?」
隣で味噌汁を作っている平助が声をかける。
『いいのいいの。落し蓋って言ってね?この方が味が染み込むんだよー!』
「へぇ。そうなんですね!結愛ちゃんすごいです。」
千鶴は平助を手伝いながら頷き関心していた。