現代パロ・お話
□Sweet home 〜second season〜
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今日は、本当に忙しい日だった。
仕事が終わらず、今はもう22時を回ったところだ。
それでも、俊太郎さんと晋作さんはまだ仕事が終わらず、バタバタしているのだけれど、私に手伝えることも、それ以上は無く、私は、先に仕事を終わらせてもらう事にした。
こんな日に限って、秋斉さんは、大阪に出張中で、不在。
もし秋斉さんがいたら・・・こんな事態にはなっていなかったのだろうか?そんな事を考えながら私は職場を後にした。
「それにしても・・・今日は寒いなぁ・・・。」
そう独り言を言いながら、歩いていると、私の近くに1台の車が止まった。
スッと窓が開き、運転席から顔を出したのは慶喜さんだった。
「慶喜さん。今帰りですか?」
慶「まぁ、そう言う事にしておいて。こんな夜遅くに女性が一人で歩いているのも物騒だからね。一緒に帰ろう。」
「ありがとうございます。」
そう言うと、助手席のドアが開いて、私を中から呼んでくれた。
この車は、慶喜さんの私用車だ。
いつも会社へは社用車で出かけているはずだから、もしかしたら、帰りが遅い私を心配して迎えに来てくれたのかもしれない。
そう思うと、嬉しさが込み上げてきた。
慶喜さんの運転で、あっという間に家に到着すると、慶喜さんは優雅に助手席のドアを開けて、エスコートしてくれた。
慶「さぁ、お姫様、我が家へ到着ですよ。」
「そんな・・・恥ずかしいです。」
そう言いながらも、差し出された手は、しっかりつかんで車から降りると、そのまま家に入った。
玄関へ入ると、美味しそうな匂いが漂ってきていた。
慶「今日の夕食は、土方君特製のおでんだよ。それに、沖田君手作りの白玉あんみつまであるからね。」
慶喜さんが嬉しそうに教えてくれた。
歳三さんの作るおでん。
何で出汁を取っているのか、未だに教えてもらえないのだけれど、ただのカツオや昆布だけではなさそうで、もの凄く手の込んだおでんを作ってくれる。
中でも、味がしみ込んでいる大根と、口の中に入れると蕩けてしまいそうになる牛筋は絶品だ。
今日もそれが食べられると思うだけで、嬉しくなってしまう。
そんな事を考えながら、一度部屋へ行き、荷物を置いて出ようとすると、ドアのところにいつの間にか慶喜さんが立っていた。
慶「今日は、邪魔する奴もいないしね。」
そう言いながら、片手でネクタイを緩めている慶喜さん。
甘い雰囲気を醸し出して、近付いてくる慶喜さんに吸い込まれそうになる。
疲れているから・・・そんな理由だけで甘えちゃっていいのだろうか?
そう思いながらも、彼の腕の中に私の身体は吸い込まれていく。
抱きしめてくれる腕は、何処までも優しくて。
そっと髪を撫でてくれる指も、まるで壊れ物に触れているかのようだ。
触れるだけのキスを交わすと、慶喜さんは私から離れて行った。
寂しさもあったけれど・・・私のお腹が「ぐう」そう言ってしまったから。
少し笑いをこらえながら。慶喜さんはリビングへと先に行ってくれた。
部屋着に着替えて、リビングへ着くと、good timingで歳三さんが夕食を出してくれた。
幸せない気分で「頂きます。」そう言って、おでんを頬張った。
「おひひいれす(美味しいです)」
口の中でほくほくの大根を頬張りながら言うと、クスッと笑って、歳三さんは頭を撫でてくれた。
「誰も取らねえから、ゆっくり食え。」
そう言うと、再びキッチンの方へ消えていった。
すると、今度は総司さんが、デザートを持ってリビングへやってきた。
「今日のデザートは、白玉あんみつですよ。」
にこやかに運んできてくれて、私の隣に座った総司さん。
私がご飯を食べるところを、隣でじっと見つめている。
「恥ずかしい・・・です。」
小さな声でそう言うと、総司さんは微笑みながら応えてくれる。
「こんなにおいしそうに食べてもらえて、おでんたちは幸せだなぁって思っていたんです。
土方さんが作ったからですか?」
「このおでんのお出汁。作り方を教えてもらえないんです。だから、何が入っているのかな?って想像しながら食べてたんです。それが美味しそうに食べてるって思ってもらえて、嬉しいですよ。総司さんの付くって下さった白玉あんみつも大好きですから、食べるのが楽しみです。」
そう言うと、総司さんはいきなりほっぺにチュっとキスをして、離れて行った。
「ありがとうございます。じゃぁ、お風呂の準備してきますね。」
そう言って、リビングから出て行ってしまった。
仕事で疲れたけれど、こうやって皆が私を癒してくれる。
甘い生活に、何だか溺れそうで。
でも、幸せに浸れる唯一の時間だから・・・。
そんな事を思いながら、食事を終えた。
私が食事を終えると、慶喜さんは明日の朝早いからと、もう一度私とキスを交わすと部屋へと戻っていった。
私は、食器を持って、キッチンへと入っていった。
すると、歳三さんがまだ帰宅しない俊太郎さんと晋作さんの食事の準備と、明日の朝食の準備をしていた。
「美味しかったです。ごちそうさまでした。」
そう言いながら流しに食器を置くと、後ろからそっと抱きしめられた。
「今日は遅かったな。疲れたか?」
そう言われて、小さく頷くと、首筋にチュッとキスが落とされた。
そして、歳三さんが耳元で囁く。
「風呂から出たら・・・部屋でマッサージしてやるよ。お前が寝るまで・・・だけどな。」
「そ、そんな・・・歳三さんだって疲れてるのに・・・。」
「俺は大丈夫だ。それよりも、お前が心配なんだ。そのくらいさせてくれ・・・。」
そう言うと、私をくるっと反転させて、触れるだけの口付けを交わす。
「歳三さん・・・。」
「今日は藍屋さんが居ないからな。俺に、その役回りをさせてくれよ・・・。」
「ありがとうございます・・・。」
「風呂に行って来い・・・部屋で待ってる。」
そう言うと、歳三さんはキッチンを後にした。
何だか、皆に気を使わせてしまってる・・・そんな気がするけれど、もう、この暮しから離れるなんてできないかも・・・。
そう強く思ってしまった日だった。
〜 end 〜