Purple Lilac

□1話
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「見て!私の勇姿を!」
ジャーンと、効果音が付くような感じで友達の目の前に差し出したのは、女の子らしい封筒のラブレター。
「とうとう決心したんだ?頑張れ!」
「うぅ……でも、本人に直接渡す勇気がないから、下駄箱入れる……」
「何、それ…」
「だって……クラスも違うし、あんまり交流が……」
「まぁ、楓が決めたんならそれでいいけど…」
「ってことで、放課後までに入れてくる」

友達にも報告をしてまで私は自分を追い込み、6限目が始まる前に野村くんの下駄箱にラブレターを入れた。

野村くんはいつも学年トップの成績を誇る優秀な人で、私はいつも目標にしていた。おかげで、自慢するわけではないけど、私もいつも成績は上位に名を連ねるほどになった。
高校生活も最後だからと、意気込んでラブレターを置いた訳なんだけど…




「…………井口楓、いる?」
「げっ、新田じゃん!」
「え、今日来てたの!?」
「井口、指名されてるぜ?何したんだ…」
放課後、私のクラスがざわめいたのも無理はない。
威圧感たっぷりに教室の入口からクラスを見渡しているのは、見た目完璧ヤンキーな同級生の新田くん。
ぶっちゃけ、一番関わることのない人というか、関わりたくないんだけど何故か指名されているし、何よりクラスメートの視線が痛い。
みんなを安心させるために、私は意を決して立ち上がった。

「……は、はぃぃ……私です…」
「………ちょっと顔貸せよ。」
若干声が裏返ったことも気にせず、彼はくいっと顎で来いと示した。
ビクビクしながらも、みんなに大丈夫と示しながら近寄った。
「お前ら、来たら殺すぞ。井口と話してぇだけだからよ」
私が教室を出ると、すぐさま教室に向かって脅しをかけ、みんながコクコクと頷くのを確認してから、私を人気の少ない階段の踊り場へ連れていった。



「……確認だけど、アンタが井口楓?…」
「……うん。そう、だけど……」
「ふーん…」
頭から足まで一通り眺められて、私は生きた心地がしなかった。
早く用件を……と思ったところに、新田くんは一言だけ発した。


「これから、よろしく。楓?」


「………………は?」
突然のことにビックリして顔をあげると、新田くんは無表情な顔の横にピラっと一枚の紙を掲げた。


『好きです。よかったら付き合ってください
3-A 井口 楓』


それは、紛れもなく私の渾身のラブレターだった。

「……え、あれ?それ………」
「俺の下駄箱入ってた。お前なら別に彼女でもいい。……俺と付き合うんだよな?」
「………ひっ、……は、はいっ!よろしくお願いしますっ!!」
無表情で見下ろされながら、淡々と話す彼に、渡す相手を間違えたから返してくれなんて言えるはずもなく、私は勢いで肯定してしまっていた。


初めての告白は、とんでもなくおかしな方向へと進んでしまいました。
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