Pink Phalaenopsis

□恨みをもつ男
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「うー、寒いなぁ…やっぱり車出してもらった方が良かったかな…」
集合場で、みんなでご飯を食べることになった。
たまに私が、十数人分のご飯を作るようにまでなったんだけど、この日もみんなが持ち寄ってくれるなか、サラダだけでも作ろうと思ってた。
でも、材料がちょっと足りなくて今買ってきたところだ。
(部屋や作業場があるのはともかくとして、キッチンまであるんだもんなぁ…あそこを設計した人スゴいよね)
そんなことを思いながら歩いていると、横を車が通りすぎ前方で停まった。

柄の悪そうな男が3人降りてきたかと思うと、私の方へ歩いてきた。
「横瀬 ナツ だな」
「………」
相手が私の名前を知っているのに驚いたが、そんな事はおくびにも出さず無言で男たちを睨み付けた。
「一緒に来てもらおうか」
「……イヤだね。忙しいから無理、っていうか人違いだろ?」
「調べはついてる。大人しく来た方が身のためだぜ?」
これは時間掛かりそうだな…なんて思いながらどうやって切り抜けるかを考えていた。
だけど、こんな奴等は短気である。しびれを切らした一人が拳を振り上げてきた。
「…チッ」
それをさらりと躱わし、後ろから蹴りをいれた。
「ぐっ…」
「このアマ…っ」
まさか私が反撃をするとは思ってなかったのか、隙を見せてくれた一人は膝をついた。だけど、それが失敗だった。
残りの2人が一斉に襲い掛かってきたのだ。
「………っ痛………………ぐっ…っっ!」
何とか避けたが、その隙を狙って後ろから羽交い締めにされた。
もともとの体格差、力の差がありすぎる。それだけでも体が痛かったのに、両腕を後ろに思いっきり引かれ、前に立った男はあろうことか、私の首に手をかけた。
片手だというのに、喉を締め上げられる力は半端ない。
「………が、っ……」
意識が朦朧としてきて、死ぬ…と思った時、車からもう一人降りてきた。

「止めろ。殺すなっつっただろ」
「ガイさん」
「……………がはぁっ、!ごほっ、ゲェ…っっ……」
離された体は、酸素を必死で求めた。
膝と両手をついた拍子に頑張って守ってきた卵がぐしゃっと派手な音をたてた気がするが、それに構ってる余裕はなかった。

「………はぁ…はぁ……っ…がっ…」
ガイと呼ばれた男は私の髪を掴み、グイッと頭をあげさせた。
まだ息が整ってない体には辛すぎる。そして、何よりこの男の雰囲気は他の3人とは違う。
抵抗する気はないが、それでも睨むことは止めれなかった。
「へぇ…まだそんな目が出来るのか……一緒に来てもらうぞ。縛れ」
有無を言わさぬ態度でそう告げると、他の3人に命令した。
男たちは、私を後ろ手で縛り両足にも縄をかけたあと、車に運んだ。

あまりにも疲れ果てたせいか、車の中で意識を失ってしまった。

「……………ほしいな…」

男が何かを呟いた気がするが、私には届かなかった。
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