リナリア

□04 気持ち
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「………瑠依っ!」
「…えっ!?あ、ごめん…」
「さっきからボーッとしてるけど…何かあった?」
「え?……ううん、何でもない。ホントごめん」
「…ったく。久々に会ったっていうのに…」
「うん、まったくだね。で、次ここね」
休日。瑠依は優樹の家で勉強をしていた。
優樹も珍しく部活が休みだったので、会うのは約2週間ぶりだった。
ただ、瑠依は先日の尚弥とのことを引きずっていてこの日も上の空になることが多かった。

「あー疲れた。優樹ありがと。おかげで早く終わったよ」
「おう。にしても、数学苦手だよなぁ」
「もう訳わかんない。理系な優樹が羨ましいよ」
「はは。じゃあお礼はこれで」
「え?……ん」
チュッ。
あまりの不意討ちに瑠依は目を開くだけだったが、軽く重なっただけですぐに離れていった。
「…もう」
恥ずかしくて俯いてしまったが、すぐに両手が頬に触れそのまま顔を上げられてしまった。
目の前には、さっきまでとは違う顔をした優樹が見ていた。
「あの……優…」
「瑠依…」
優樹がキスをしようと顔を近づけた時、瑠依の頭に尚弥の顔が浮かんだ。
「……やっ…」
瑠依は思い切きり拒んでしまった。
「瑠依…?」
「え……あ……あの……」
「…何で泣いてんの?……なぁ、他に好きな男でもできた?」
「違……そんなの…いない」
「はぁ…嘘だね。じゃあ何で拒むんだよ、泣くんだよ。浮気でもしてた?ずっと隠れてさ」
「してない!そんなこと…」
「実は俺さ、前に見ちまったんだ。お前が家に入って男が帰っていくとこ。送ってもらったんだろ?アイツと付き合ってんの?」
「付き合ってない!あれは…ただ…」
「……何だよ」
「最近、転入してきたクラスメートで…私、委員長だからって…学校近くの案内とか頼まれて……家も同じ方向だからって……」
「……で?一緒にいたわけ?」
「うん……」
「ふーん…でもそれが本当だとしても、今のキス拒む理由にはならねぇよな。なぁ、俺以外に想ってる奴いるんだろ?」
「…いない…」
「じゃあ、瑠依からキスしてよ」
「え?」
「できるだろ?」
「…あ…」
瑠依は優樹に近付いた。
心の中でアイツは違う、と叫びながら。だけど、ずっとあの時の光景が頭から離れなかった。



「………ごめん………」

キスをする直前、瑠依から出た言葉だった…
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