Snake's head fritillary

□2話
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「……え…やっぱ、部屋一緒…?」
「当たり前だろ。それより明日は早い。俺は寝るぞ」
そう言うと、紳一郎さんは私を気にすることもなく綺麗に二つ並べられた布団へさっさと横になった。



あれから何があったかと言うと、紳一郎さんと蓮実さんはすぐに部屋を出ていき、入れ違いに奥様…百合さんが来て夕飯の手伝いをすることになった。
百合さんは見た目、完全にそっちの人だよね!?って思わずにいられないくらいの貫禄があって正直怖かったんだけど、話すと気さくで優しくてすぐに打ち解けることができた。
私のお母さんはすでに他界してるから、重ねてしまったのかもしれない。
で、一緒にご飯を作って幹部の人たちも含めたところで食事をした訳なんだけど、やっぱり紳一郎さんと蓮実さんは居なくて。
うちの家と同じくらいの人数だったから準備とか別に大変だとは思わなかったけど、何ともいえない食事と片付けを終えて部屋に戻ると、いつの間にか戻ってきていた紳一郎さんが私を出迎えたのだ。
そこには、布団がぴったりくっついていてさすがの私も驚いたというわけである。
お風呂から上がる頃には紳一郎さんも変だと思うはず、なんて淡い期待も簡単に裏切られ、さも当然のことのように一緒に寝る羽目になってしまった。


「……あの…紳一郎さん?」
「…………何だ?」
「明日早いって…何時ですか?」
「4時だ」
「よっ…!?」
「わかったなら、お前も寝ろ」
私の方をチラリとも見ずに告げられた時間に唖然として、私は少し布団を離してから背を向けて横になった。



「………起きろ」
「……ん……?………っ」
意識を浮上させると、部屋に電気がついていて眩しくて目を細めた。
そして、ガバッと勢いよく飛び起きると紳一郎さんが私を見下ろしていた。
「………ごめんなさい!…寝坊…」
「かまわない。もう出るから…」
言いながら襖を開けたので、私は慌てて上着を羽織り後ろを着いていった。
「……気を付けて…」
「あぁ」
そしてまた、私を見ることなく家を出ていったのだった。

「……はぁ……失敗しちゃった」
寝坊したことを悔やみながらも、目が覚めてしまった私は部屋に戻って布団をたたみ着替えて、誰かが起きてくるまでと部屋の前の廊下の縁に座り、目の前に広がる池を見つめていた。

「あれ?茉帆ちゃん、おはよ」
「…え?あっ、蓮実さん、おはようございます」
「だいぶ早いね?寝れなかった?」
声をかけてくれた蓮実さんは、そのまま私の横へ座った。
「いえ…紳一郎さんが出掛けたから…」
「あぁ、そっか。起こされちゃったんだね」
「…はは、起きる時間聞いたのに寝坊しちゃって…」
「ま、昨日の今日だもん。仕方ないんじゃない?……紳一郎には慣れた?」
「えーっと…………全然……」
「あはは、当たり前か。アイツわかりにくいし。ずっと一緒にいると段々分かってくるんだけどね…まぁ、頑張って?」
「……はぁ…」
ニコッと微笑まれながら頭をぽんぽんと撫でられ、私はため息をつくしかなかった。
それから、百合さんが私の部屋へ朝食の準備のために声をかけにくるまで、蓮実さんはずっと私の相手をしてくれていた。
私は、紳一郎さんより遥かに話しやすい蓮実さんになついていったのだった。
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