傾籠

□3話
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今までも、週に数回。南くんの気が向いた時に犯されてた。
本人には絶対に言ってやらないけど、南くんとの体の相性はいい方だと思うし、実際女慣れしてるだけあって上手くて気持ちいい。
最初は驚いたけど、私もすぐにセフレとして割り切ったし、お互いの気持ちなんて関係ないって思ってた。
まぁ、いつも私の予定とか無視だから毎回悪態はつくけど。
でも、いつからだろう…体だけを求められることに苦しさを感じるようになったのは…。

突然、校内に拡散された南くんの女事情。
私の耳に届いたのは放課後になる頃で、女と切ったという情報と同時に流れてきたのは、本気になった相手がいるらしいこと。
深みにハマる前に私もようやく解放されるって思ってたのに、あろうことかその日に現れて告白まがいなことをしていった。
さらに「本気だ」なんて言われてもどうやって信じればいいかわかんない。
信じて馬鹿をみるのも嫌だった。
だから、体育祭があるまでのこの2週間ほど、平穏な日々を迎えれたことに正直ホッとしていて、このまま以前の生活に戻れたらいいと思っていた。



うちの高校の体育祭は、文化祭同様一般参加が認められている。
だから当然、子供から大人まで興味ある幅広い年齢層が訪れるわけで……

「聖也ーーっ!」
「うぜぇ、離れろよ」
「そんな冷たいこと言わないの。…アレ、引き受けてあげたでしょ」
「…チッ」
実行委員としてあちこち走り回ってる私の目に飛び込んできたのは、めちゃくちゃスレンダー美人なお姉さまが南くんの腕に絡み付いて一緒に歩いているところ。
他の生徒もそれをバッチリ目撃していて、本命の彼女だとかお似合いだとかいろいろ言っている。

「…やっぱり、女いるんじゃん」
誰がみてもお似合いで絵になって、さらにあんなに仲良さげな姿を見たら、妙に納得した自分がいて…本気にしなくて良かったと思うと同時に、ツキンと胸の奥が痛くなった気がしたけどそれには見てみぬ振りをした。
(……これで、元通りになる)
これ以上考えるのはやめようと、他の場所へ行こうと足を反対に向けたところで、意外な人物から声をかけられた。

「龍袈?」
「え……潤?」
「マジで会えたー。連れに誘われて来たんだけど、会えるなんて思ってなかった」
「や、私もビックリしたんだけど…元気そうだねー」
「おぅ。忙しいのには変わんねぇけどな……なぁ、何時に終わる?」
「んー、片付けあるけど後夜祭には出るつもりないから、6時までにはあがれる予定なんだけど…」
「それから会えねぇ?今夜はこっちにいるんだ」
「………ん。わかった」
電話番号を確認して、終わったら連絡すると約束してから別れた。
潤は、元カレで今は県外の工専に行っている。
中学から付き合っていたけれど、遠距離なのと潤の生活の忙しさにすれ違いが起こって、去年別れた。
別に喧嘩別れをしたわけではないから、会えたことは素直に嬉しかった。
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