虚無ノ欠片

□第捌話
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雪「…遥斗ー!どこにいるの?遥斗ー!」

ニャーンフミャーンーーーー!

何度叫ぼうとも雪葉の声は宵闇に声は消えて行く。その闇の中から返ってくる声はない。人の気配すら微塵も感じさせぬ夜に妖しく月だけが雪葉と白雪を照らしている。

雪「白雪…ごめん………ごめんね?遥斗、見つからないね。あの時僕が白雪を連れて来なければ白雪を危ない事に巻き込まなかったかもしれないし、遥斗の側に居れたかも知れないのに…」

ミャー!フミャーン〜ミャン!

雪葉の悲しげな声に答えるように白雪は鳴く。その鳴き声はけして雪葉に対して怒るなどと言う感情は無く、ただただ元気をだして欲しいと言う思いが伝わる。

雪「……。温かいね…白雪は…。遥斗もいつも温かいんだ…。それにいつも甘えてる。これは罰なのかも知れない。《運命》を呪った事は無いよ?でもね、《その時》が近づく事が恐かった。出来るだけゆっくりと《時》がたてば良いって…」

ミャウ……ミャァァ〜……

悲しい声で言うのにその表情はとても穏やかで口元は微笑すら浮かべて言う雪葉。それを聞いている白雪の方がずっと悲しげな声で鳴くのだった。

雪「…そんな声で鳴かないでよ。遥斗は知れないままで良いんだ…。僕の、僕なんかの側でいつまでも笑うなんて勿体無いの。長く長く遥斗を苦しめているのは他の誰でもない《僕》なんだから…」

そっと白雪を抱えポツリポツリと声を漏らす雪葉だったがそれ以降声を発すること無く。夜の闇の中を闇雲に走りただ一人の少年を探すのだった。
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