虚無ノ欠片

□第陸話
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家の状況に絶句していた遥斗だがすぐに家を飛び出し森に向かって走っていった。

遥(あいつがそんな簡単に怪我なんかするわけない。するわけない。無事でいるよな…。当たり前だよな。あいつは強いんだ…)

無我夢中で走りながら自分で自分に雪葉の無事を言い聞かせながら走って行った。村はいつもの通り平和でとてもさっきの光景が現実だとは思えないほどだ。

遥「……ッゼ…ハァハァ…。雪葉ーー!!何処にいる?出てこいよ。悪い冗談やめろよ!!雪葉!!!」

………シーン

森に着き大声で呼ぶが返答は帰ってこない。至る所を闇雲に探していたがやはり居るような気配はない。遥斗はまた走り出した。

遥(きっと…きっとすれ違いになったんだ。きっとそうだ。そうに決まってる。会ったら覚悟しとけよ雪葉。そう簡単に許してやらないからな…)

必死に走る遥斗。焦る気持ちとは裏腹に見つからない。空乃家、自宅、商店街、土手沿い、坂道、学校。いつも雪葉と歩く道をくまなく探す。

遥「……ハァハァ…ッ!!……ッゼ…ッゼ」

遥「に、いんだよ!何処に居るんだよ!!!雪葉ーーー!!」

……シーン

遥斗の声は沈みかける夕陽に吸い込まれるように空へと消えた。まるで遥斗しか存在しないのではないかと言うほどの静寂に包まれていた。

遥「……。出てきてくれよ…雪葉…何処にいる?どうすれば会える…?」

遥「…あの時に一緒に行けば、こんなことには…携帯があるって…自分の方が強いから何かあっても平気だって…連絡するって…言ってたじゃんかよ…」

遥「…頼むから、出てきてくれよ…雪葉……」
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