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□プチパニック
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太陽の日差しがギラギラと暑くなる昼頃、フランはベルを探してアジト内を歩き回っていた。

すれ違う隊員たちにベルを見なかったかと聞いてみるもののみんな口をそろえて
「見ていません」とそのセリフだけを今日は何度聞いただろうか。

他の幹部にもベルを見なかったかと聞きたかったのは山々なのだがすれ違うどころかベルと同様に姿がみえない。

というのも、スクアーロたちがいないのは
ベルを探す前に数日前に単独で行った長期任務の報告書を提出がてらXANXUSの所に訪れたら

「カス共の幹部たちは各々の任務などでいねぇ」

だから資料に関するわからん事はベルに聞け、
と言われ自分が得意とする幻術も扱う大掛かりになる任務の資料を渡された。

ちなみに一応XANXUSに聞いてみたが「知らん、カスが」の一言で済まされた。
ただ、アジトの外に出ていないことは確認できた。

それが数時間前の出来事である。


そして今も尚ベルを探し続けるフランの手には数枚の紙。

それは丁度数時間まえに渡された任務の資料…ではなく、

昨日のことだが、日がいよいよ傾きを増した時間帯にスクアーロから
フランに渡せとベルに言われたぞ、と「ベルの」任務に関する紙を目の前にずいと出された。

スクアーロから手渡されたその紙をみてそういえば
次の任務の資料を渡すことをベルに約束した
というより、半ば強制的に頼まれていたのを思い出した。

もっと言えば頼まれた
よりパシリに近い。

本当は術士であるのを言いように利用して
自分に精巧な霧の幻覚を構築してソレに資料を渡しに行こうかと密かに企んでいた。

しかし、バレる事はまずないが万が一、バレた後に
ベルのことだからお決まりのナイフが飛んでくるのを避けたいと言う点と
ただの紙を渡すくらいのことだからと妥協した。

ベルに会って用事を済ませれば後は自由だ、
とフランは考え「ナイフが自分に目掛けて飛んで刺ささってイタイ思いをするよりマシな選択をした」

と頭の隅にこの思考を置くことで今はなんとか体に沸き起こるようにして抗議して来る
ドコにぶつければ良いのか分からない気持ちを抑えている。

 

肝心の姿が見当たらないベルを探すフランは後回しにしていて忘れていたベルの部屋の前にいた。
ここに居なかったらもう探すのは疲れるしメンドイので
やめよう、そして後でナイフが飛んでこようがどうとでもなれとフランは自分に言い聞かせた。


「ベルセンパーイ」


ベルの部屋のドアを二回ほど片手で簡単にノックしてから声をかけてみる。

中からの反応を少し待ってみるが、
それらしい応答は得られない。
普通なら返事がないということは部屋の主がいないことを示す。

ここにはいないと判断しさっさと立ち去ろうとしたがそうはいかなかった。

フランが声を掛けた途端にベルがいないと思っていたドアの向こうから気配が伝わってきたのだ。
  

「…返事くらい寄越せよ、紛らわしい」

あまりの返答の仕方に淡々とした言葉には珍しく、

「苛立ち」と「呆れた」と見られる感情が含まれ気のせいかフランの口調も少し棘のあるものに変わってしまっていた。


さて、部屋にいると分かればとっとと用事を済ませるため、ドアノブにさっとフランは白く細い自分の手を掛けた。

ベルも普段から自分の部屋に来るときは予告なしだからコレくらい大丈夫だろう…、
ノックもちゃんとしたし文句は来るはずない

と割り切って遠慮なしにドアノブを捻る。



鍵が掛かっていないのかガチャリと簡単に開いた扉の隙間からは
部屋のソファに座りゲーム機のコントローラーをもってテレビゲームをしているベルがいた。

「…何ですかそのゲームは」

ベルの座るソファ近くに行き、邪魔をしないようにベルの方へと視線を移す。


「しし、見てわかんねぇ?ホラーゲーム」

「まぁ…わかりますけどー」


視線をベルからテレビの画面に変える。

なんとも気持ち悪い呻き声を上げてこちらに
向かってくる全身が濁った緑やら青の色をしたゾンビを
ベルはコントローラーを素早く操作しゾンビに狙いを定めて
ゲームの中ではあるが武器である銃で次々に倒してゆく。


画面を見てゲームをするベルからは余裕といった表情が
ベルを直接見なくても、そのプレイングで掬いとるように分かる。


「結構強いんですねー。ゾンビが可哀想に見えてきましたー」

「ししし、だろ?もっと褒めてもいいぜ」

「…頼まれてた資料ココに置いときますー」


といい少し大きめのサイドテーブルに資料を置けば、ソファの方から

「おい、無視すんなカエル」

と言われたが、何も聞かなかったことにする。

チラリ、と画面をみれば
ゾンビが群れて迫って来ているのにも
かかわらず、銃や他のアイテムなどで容赦なく
行く道をゾンビの死体で埋め尽くしてゆくその右端にあるものに目がいく。


「その右端にあるバーはライフゲージですか?」

「そそっ、…っと危ねぇ」


焦る様子を見せたがそれでも
右端に置かれたライフゲージの上に
NO DAMAGE!!と言う文字が忙しなく点滅していることから、

一度もベルはゾンビからの攻撃を受けていないことが
その文字と巧みなプレイングから分かる。



 

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