小説
□夢のような
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――ふと気が付いたら。
そこは、教会の神父の前だった。
「え、あれ?」
自分の格好がいつの間にか純白のウエディングドレスになっていて。
隣りには、タキシードを着たベジータが立っていた。
一瞬のうちに何が起こったのかわからず、慌てふためくブルマをよそに、神父はベジータに問う。
「新郎ベジータ、あなたは新婦ブルマが病めるときも、健やかなるときも愛を持って、生涯支えあう事を誓いますか?」
「ああ。」
「では、」と神父はブルマのほうを向き。
「 新婦ブルマ、あなたは新郎ベジータが病めるときも、健やかなるときも愛を持って、生涯 支えあう事を誓いますか?」
夢にまで見たこのセリフ。
混乱しているさなかでも、やはり嬉しさがこみ上げてきて。
なんというか、幸せだった。
今はその感情しかなかった。
足がふわふわしているような。
「はい、誓いま……」
言いかけた、その時。
――――――
「おい、起きろ!」
怒鳴り声が頭の奥深くに響いてきた。
曖昧に美しく彩られた教会の風景は、闇の中へと姿を消す。
(あれ?
突然、どうしちゃったの?)
再び、ベッドからむっくりと起き上がる。
そして、あまりの眠さに頭がぼうっとして、痛い。
「やっと、起きやがったか。
何時だと思ってやがる。」
声のするほうにそっと目を向けると。
タキシード姿のベジータはいなくて。
いつものように朝のトレーニングを済ませ、ラフな服に着替えたベジータがいた。
「はあ……やっぱり、夢よね。」
少し残念そうな顔をして俯く。
「何の話だ?」
何が何やらわけがわからん、というふうなベジータ。
相変わらず、不愛想で、偉そうで、目つきが悪くて。
だけど。
「あんたはあんたのままが、1番だわ。」
ふっと微笑う。
結婚式を挙げようなんて言うあんたは、病気か何かよ、きっと。
「おい!
寝過ぎて頭がおかしくなったのか。
そんなつまらん戯言には付き合いきれん。
いいから、早く準備しろ。
今日は遊園地に行くんだろ。
トランクスが早くしろと騒がしくてかなわん。」
そうよね。
今回は珍しくあんたから遊園地に行こうって誘ってきたのよね。
「わかったわ、すぐ準備する。」
結婚式、確かにそれもいいけれど。
…正直したいけど(夢に出てくるくらいだし)。
こんな日常を、家族と共に繰り返していく。
それも悪くないから。
思わぬサプライズをしてくれた夫に最高の笑顔を手向けるブルマであった。
《END》