小説
□きざし
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「電話?誰から?」
スタンドを立て直し、お手伝いロボットに聞き返す。
「チチ様からです。」
あら、珍しい。
「わかったわ、すぐ行く。」
――――――
「もしもし、チチさん。」
「もしもし、ブルマさ?
昼の忙しい時にすまねえな。」
「いいわよ、別に。
…それで、何かご用かしら?」
「んだ、それでな、オラんちの車を直してほしいんだが、大丈夫だべか。」
「あら、修理の依頼?
確か、チチさんとこの車って、うちの製品だったわよね。
修理に必要な部品とかは予備があるはずだから……。
父さんは今、出張に出てるし、あたしで良ければ直すわよ?」
「そうか、助かっただ。
年末年始の買い物に、車でちょっと遠出しようって時に、悟空さときたら、ぶっ壊しちまって……。」
「孫くんらしいわね。
おおかた、修業しててその勢いで壊しちゃったんでしょ?」
「いんや、悟空さが運転して、壊しちまっただよ。」
「あら!孫くん、車の免許、取ったの?」
「んだ。
だども、あれは危険ドライバーだべ。
よく、あれで免許が取れたもんだとオラ思っちまっただよ。
試しに運転させたオラがバカだったなあ……。」
チチの話によると、車に乗った悟空は発進の際、アクセルとブレーキを踏み間違えて自宅に突っ込んでしまったらしい。
自宅にある他の車もあいにく故障中で、年の暮れのまとめ買いをしに行こうにも、身動きが取れない状況にある、と彼女は続けた。
「そ、それは大変だったわね。
で、いつ、どこで修理しようかしら?
んーそうねー。
ちょうど、明日、あたし仕事がオフだから、明日にしてほしいわ。
それで修理する場所なんだけど…。
あたしがチチさんちに行ってもいいんだけど、それだと、どの部品とか工具が必要か読めないから……できれば、うちまで持ってきてほしいわ。」
「それは一向に構わねえだ、悟空さは瞬間移動ができるからな。」
「あ、なるほど。
便利ね、瞬間移動って。」
「それじゃあ、よろしく頼むだ。
それで、修理代はどのくらいだべか?」
「いいわよ、別に。そんなの、いらないわ。」
「だども……」
「遠慮しないで。自宅も修理しなきゃいけないんでしょ?
あ、そうそう。故障してるもう1台の方も持ってきてもいいわよ。」
「そんな、悪いだよ…」
「いいからいいから。」
「なんか、申し訳ねえな……。
…………んなら、お言葉に甘えて。
よろしくお願いしますだ。」
「じゃ、明日の朝、孫くんに壊れた車を持ってくるように言っといてちょうだい。
あ、そうそう。
持ってくるっていっても。
カプセルに入れて持ってきてね。」
「わかっただ。
ありがとう、ブルマさ。」
車の修理の約束を取り交わし、ブルマは受話器を置いた。