小説
□揺れ動くこころ
2ページ/8ページ
考える、とは言ったものの。
それが、かえって逆効果だったのかもしれない。
考えれば考えるほど、頭の中は渦を巻き。
気付けば、喫茶店での1件から、すでに2日が経っていた。
「あーもう。嫌になっちゃうわ。」
午後の白い陽光が高いところから窓に差し込み、自室を柔らかく包み込んでいる。
そんな中、ブルマは独りベッドで横になり、誰に呟くでもなく悪態をつき。
掛けていたタオルケットを深くかぶり直す。
…今日は一歩も部屋の外から出ずに、ベッドで横になっていた。
本来なら仕事をしているはずの時間帯。
なぜこのような状況なのかというと。
――彼から半ば逃げるように帰宅してからというもの、彼と結ばれるか否かについてあまりにも深く考えてしまい、四六時中、上の空であったブルマ。
それこそ、父や母に声をかけられても、全然気が付かないほどだった。
もちろん意識はあるのだが、視線はどこかあらぬ方を向いていて。
生気がまるで感じられなかった。
このような状態では、当然、仕事に身が入るわけもなく。
プロポーズの翌日の仕事っぷりはひどいものであった。
精密機械のメンテナンスのはずが、逆にその機械を故障させてしまうという有り様である。
娘のただならぬ様子を見かねた父が、「少し、頭を冷やしておいで。」と、その日とその次の日の仕事を休みにしてくれた、というわけなのだが。
――その休みも今日まで。
明日から仕事。
しかし、結論は下せていない。
今日は朝食も昼食も抜いた。
娘の安否を気遣い、自室を訪ねて来た母には、「悪いんだけど、今は一人にして欲しいの。」と言って追い払った。
「はぁ……。」
今日何度目かわからぬ溜め息をつく。
結婚するか否か。
言葉に表せばこんなにもシンプルであるのに。
(…あたしって、こんなに優柔不断だったかしら?)
普段の自分は、好きなことは好き、嫌いなことは嫌い、とはっきり他人に言えるような、そういう性格の人間だ。
物事のイエス・ノーは、そのときの気分と直感で、即決できる。
それなのに。
話題が「結婚」、となると、どうやらそう上手くはいかないらしい。
自分の将来を大きく左右する結婚、という人生の一大イベント。
それを軽くあしらえるほど、自分の肝は座っていなかったということだろう。
…もっとも、世の女性の大多数はそうであろうが。
ヤムチャと喧嘩の最中、「あんたとなんか、別れてやるわ!」と幾度となく喚きたてたはずなのに。
いざ、こうして選択を迫られると、躊躇ってしまうのはなぜなのか。
…とはいえ、このようにいつまでも悩んでいるわけにはいかなかった。
ヤムチャは気を利かせてか、どこかへ出掛けているようであったし。
…早めに返事をしないとさすがに彼にも悪い。
ここまで待たせておいて、返事は保留というのはまずいだろう。
「…はぁ。」
こんなにも真剣に考えているのに。
自分の思いは平行線のまま、何の進展も見せない。
「いい加減、イライラしてきたわね。」
再び悪態をついた、次の瞬間。
「おい、女!重力室が壊れた。さっさと修理しろ!」
怒鳴り声がドア越しに聞こえた。