小説

□揺れ動くこころ
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考える、とは言ったものの。


それが、かえって逆効果だったのかもしれない。


考えれば考えるほど、頭の中は渦を巻き。


気付けば、喫茶店での1件から、すでに2日が経っていた。


「あーもう。嫌になっちゃうわ。」


午後の白い陽光が高いところから窓に差し込み、自室を柔らかく包み込んでいる。


そんな中、ブルマは独りベッドで横になり、誰に呟くでもなく悪態をつき。


掛けていたタオルケットを深くかぶり直す。


…今日は一歩も部屋の外から出ずに、ベッドで横になっていた。


本来なら仕事をしているはずの時間帯。


なぜこのような状況なのかというと。


――彼から半ば逃げるように帰宅してからというもの、彼と結ばれるか否かについてあまりにも深く考えてしまい、四六時中、上の空であったブルマ。


それこそ、父や母に声をかけられても、全然気が付かないほどだった。


もちろん意識はあるのだが、視線はどこかあらぬ方を向いていて。


生気がまるで感じられなかった。


このような状態では、当然、仕事に身が入るわけもなく。


プロポーズの翌日の仕事っぷりはひどいものであった。


精密機械のメンテナンスのはずが、逆にその機械を故障させてしまうという有り様である。


娘のただならぬ様子を見かねた父が、「少し、頭を冷やしておいで。」と、その日とその次の日の仕事を休みにしてくれた、というわけなのだが。


――その休みも今日まで。


明日から仕事。


しかし、結論は下せていない。


今日は朝食も昼食も抜いた。


娘の安否を気遣い、自室を訪ねて来た母には、「悪いんだけど、今は一人にして欲しいの。」と言って追い払った。


「はぁ……。」


今日何度目かわからぬ溜め息をつく。


結婚するか否か。


言葉に表せばこんなにもシンプルであるのに。


(…あたしって、こんなに優柔不断だったかしら?)


普段の自分は、好きなことは好き、嫌いなことは嫌い、とはっきり他人に言えるような、そういう性格の人間だ。


物事のイエス・ノーは、そのときの気分と直感で、即決できる。


それなのに。


話題が「結婚」、となると、どうやらそう上手くはいかないらしい。


自分の将来を大きく左右する結婚、という人生の一大イベント。


それを軽くあしらえるほど、自分の肝は座っていなかったということだろう。


…もっとも、世の女性の大多数はそうであろうが。


ヤムチャと喧嘩の最中、「あんたとなんか、別れてやるわ!」と幾度となく喚きたてたはずなのに。


いざ、こうして選択を迫られると、躊躇ってしまうのはなぜなのか。


…とはいえ、このようにいつまでも悩んでいるわけにはいかなかった。


ヤムチャは気を利かせてか、どこかへ出掛けているようであったし。


…早めに返事をしないとさすがに彼にも悪い。


ここまで待たせておいて、返事は保留というのはまずいだろう。


「…はぁ。」


こんなにも真剣に考えているのに。


自分の思いは平行線のまま、何の進展も見せない。


「いい加減、イライラしてきたわね。」


再び悪態をついた、次の瞬間。


「おい、女!重力室が壊れた。さっさと修理しろ!」


怒鳴り声がドア越しに聞こえた。



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