小説
□彼女の正義
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あたしは小さい頃からかわいくて天才だった。
父さんがホイポイカプセルを開発した研究者兼社長だったこともあって、父さんの背中を見て機械いじりが好きになったし、金銭面は何不自由なく過ごせた。
でも2つだけ不満があった。
それは髪の色と名前だった。
まず、青い髪の人ってあまりいないし、何より女性の下着と同じ名前でしょ?
他人と際立って違う何かを持っていれば、ヒーローになるか、はたまた虐めの標的の極端な2つの道しかない。
特に小さい頃はそれが特に顕著なのね。
大人になってからも辿り着く道は同じ。
ただ大人の方が、世の中を見てきた分、空気が読めるからそこまで極端にはならない。
ベジータに言わせれば、弱いのが分かるから皆同列に生きることを望むんだって。
独裁者的な立場にある人がこの世界であまり良しとされないのは、1人だけ甘い汁をすすれることを良しとしない地球の人々の性質にあるのかもしれないわね。
確かにこの世界は何かが他人と違うだけで、変わり者扱いだし。
まあ、そんなこんなで。
青い髪、下着の名を持つあたしは、小学校に上がった途端、虐めの標的になった。
『やーい、変な髪!』とか、
『変な名前!パンツだパンツだ』とか、
そういうことを言われて石ころを投げつけられたり、靴を隠されたりしてた。
あたし、その頃にはもう、中学校レベルの学力を持ってたから、下らないなって適当にあしらってた。
母さんと父さんに相談したけど、放っておきなさいって言われたし。
……今にして思えば、かわいい娘のためにもう少しアクションを起こしてほしかったけどね。
まああんまり放っておかれるものだから、自分がしっかりしなきゃって思えた。
耐えて耐えてまた耐えて。
ずっとずっとずーっとそれが続けば、いい加減あたしも我慢ならなくなってくるわけで。
ある日、溜まりに溜まった怒りを、虐めっこたちにぶつけた。
すると、彼らは誰もあたしに何も言わなくなった。
そうか、とその時、子どもながらに自分が強いことを言葉で示せばいいのだと悟った。
そうすれば誰からも虐められなくなるって、分かった。
以来、あたしはそれを貫いている。
それがあたしの正義だから。
《END》