小説
□頭文字G
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「こちら地点B、今のところ異常なし。そっちの様子はどう?」
カプセルコーポレーション内、地点Bと呼ばれるその場所の物陰に潜んで不法侵入者の動向を窺うブルマは無線機を片手に緊張の色を浮かべていた。
『こちら地点A、……うーん、そうねー、今のところ異常なしかしらー?』
無線で通信した先は彼女の母親。ややくぐもった声が無線機を通して聞こえてくる。
ザザッ!
時折、無線特有のノイズが耳をつんざいた。
地点Aとはキッチンのことだ。
ちなみにブルマのいる地点Bはそのキッチンから出て少し離れたところの通路の陰である。
「母さんったら、しっかり状況を把握しなきゃダメじゃない!どうなの、本当に異常はないの!?」
母親のはっきりしない物言いに思わず苛立ちを感じてしまう。
恐らく母は事の重大性を理解していないのだろう。だからこんなふうに間が抜けているのだ。
……訂正、間が抜けているのは何も今だけではない。いつもだ。
「事態はとっても深刻なの。母さんのそのちょっとの、……いやかなり?の油断が命取りなんだから!」
ブルマは無線機の話し口に唾を飛ばさん勢いでまくし立てる。
そう。
事態は一刻を争うのだ。
エネミー(敵)は確実にキッチンからの移動を試みようと息を潜めているのだから。