ナズナ
□入学式
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入学式当日、朱雫は9と3/4番線のホームにいた。
今のうちに主要の三人と、少しでも近付くためだ。
もちろん朱雫は人里離れた場所で、家族とひっそり暮らしていたから、人付き合いは苦手である。
ならば、必然的に向こうから話しかけてくるように仕向ければいいという考えに至り、ダンブルドアに頼んで切符を手配してもらったのだ。
もちろん荷物は、トランク(ほぼ空というか着替えとだけである)一つだけだ。
ハリーが来た頃を見計らって、ハリーの前に乗車し、コンパートメントに入る。
荷物を棚に上げて、窓際の席に座ると、ちょうどハリーがやって来た。
「一緒に座ってもいいかい?」
「えぇ、どうぞ」
ニコリと微笑んで了承する。
「君、どこから来たの?中国?」
「日本よ」
「へぇ!そんな遠くから来たの?日本にはホグワーツみたいな学校はないの?」
「さぁ、どうだろう。突然ホグワーツに行くことになったから詳しいことは何もわからないの」
向かいの通路側に座ったハリーの質問に淡々と答えていく。
「そうなんだ。僕もこの間魔法使いだって言われてびっくりしたんだ。だって今まで…」
「…普通の人間だと思ってた?」
「そうなんだよ」
ないコミュ力を振り絞ってハリーと会話していると、控えめにコンパートメントの扉を開けて、赤毛の男の子─ロン─が顔を覗かせた。
「一緒に座ってもいいかい…?他にどこも空いてなくて…」
「うん、いいよ」
「どうぞ」
朱雫はさり気なくハリーの隣へと移動する。
コンパートメント内に入ってきたロンは荷物を棚に上げ終えると向かいの席に座り、自己紹介をした。
「僕、ロン。ロン・ウィーズリー」
「僕、ハリー。ハリー・ポッター」
ハリーが名乗ると、ロンは目を見開いて、傷跡があるのかどうかと尋ねる。
「あぁ、ほら」
ハリーは気分を害した様子もなく、ロンに稲妻型の傷跡を見せる。
うわぁ、と感動の声を漏らしたロン。
「そういえば、君は?」
名前を聞いてなかったと、ハリーが朱雫に顔を向けた。
「シュナ・レイキ。日本人よ」
「ニホン!ニンジャ!サムライ!わざわざ日本からやって来たんだ!珍しいね」
「忍者も侍ももういないわよ…。さっきも彼にに言ったけど、急に決まったことだったから」
「大変だねぇ。日本には長期休暇じゃないと帰れないだろう?」
「そうね、お金もかかるし」
私の話はいいんだよ、と内心思う朱雫。
そこへタイミングよく車内販売のおばさんがやって来た。
手際良くお菓子等の説明をしていく。
ロンは自分で持ったきたものがあると言って買わなかったが、そう言ったロンの顔は思いっきりお菓子が食べたいという顔だ。
ハリーはそれを見た影響か、はたまた初めて見聞きする食べ物だったからか、ポケットからガリオン金貨を取り出すと、全部ちょうだいとオーダーした。
車内販売のお菓子の甘ったるいような匂いがコンパートメント内に広がる。
しかも全種類ときた上に、この少年2人は全部開封したあげく、ひとくちふたくち口にしたかと思うと次のお菓子の開封にかかる。
それ故、コンパートメント内はもはや異臭が漂っていた。
「…よく食べるね」
「君は食べないのかい?」
「おいしいよ?食べてみなよ」
ハリーとロンが口々に言う。
「いや、私は遠慮なくしておくよ。少し散歩でもしてくる」
朱雫は曖昧に微笑むと、そう言うやいなやトランクからローブを取り出すと、コンパートメントを出て行った。
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