花言葉は孤独

□アランの章1 突然の訪問客
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カッカッカッ
回収課にハイヒールの音が近付いてきた
「赤い死神だろう」
全員がそう思っていた時

「ロナルド〜!ロナルドいる〜!?」

女性の声が響き渡った

肉感的な体のラインを強調させるぴったりした黒のスーツ
ダークブラウンの長い髪
セクシーな雰囲気の女性が回収課の
オフィスを見渡している

見慣れない来客にオフィスはざわめきたった
そんなことには全くお構いなしで女性は
近くの新人死神を捕まえ尋ねる

「ねぇ、ロナルドは?」
「えっ……あっ、あの、ロッロナルド先輩ですか…」
声をかけられた新人死神は突然の事に戸惑いを隠せない


「……まっったく!何事ですか、騒々しい!!!」
騒ぎを聞き付けて、奥からウィリアムが出てきた
はっきりと不機嫌な表情を浮かべている



「あっ!ウィル!!ロナルドは?ロナルドどこかしら?」
「………おや、サンドラ。」
ウィリアムの表情が更に不機嫌になった

「・・・・・・お久しぶりですね。騒いでいるのはあなたでしたか」

サンドラと呼ばれた女性はウィリアムに近づく

「ねぇ、今からロナルドと出掛けたいの。ちょっと貸してちょうだい」
「まっったく!!何ですか、あなたは。いきなり訪ねてきて。」
「だいたい、ロナルドに何の用なんです?」
「今からロナルドを連れて出かけたいの、いいでしょう?」

ウィリアムはデスクのイスに腰掛け、書類をめくりながら言った

「ロナルドは魂回収に出かけていませんよ」
「あら困ったわ。じゃ、私迎えに行くから、魂の回収は他の子に行かせてよ」
「そんなことは出来ませんよ、サンドラ。だいたい、貴女の課にだって人はいるでしょう?」
「今日はとっても大事な仕事なのよ。あの子がいいの・・・でも」

サンドラはニッコリ微笑みながら続けた

「あなたでもいいわ。ウィル」
「お断りですよ」
眉間のしわを深めながらウィリアムは答えた

「ウィル〜?」

サンドラはウィリアムの座るデスクに肘をついた
とたんに、ぴったりとしたタイトスカートのスリットが割れ、すらりと伸びた足が覗く
かがんだ胸元からは豊かな胸がチラリと見えた

ヒュー!
フロアから口笛があがる

クスリと鼻で笑いながら
サンドラは続けた

「ねぇ、ウィル?私の仕事、分かってるでしょう?今日は大事な相手なの」


甘い声と色っぽい表情でウィルにグッと顔を近づけ
長い髪を耳にかける

「今日はね・・・」

何かを耳元で囁いた

少しの沈黙の後

深いため息とともにウィルが言った

「まっっったく。仕方ありませんね」

望みが聞き入れられたことを悟った途端
サンドラはさっと体を起こし満足そうに微笑んだ


「アラン・ハンフリード!!!!こちらへ!!」


突然名前を呼ばれたアランはびっくりして立ち上がった

「はい!」


「今日はこちらのサンドラ嬢とパートナーを組んでください」
「サンドラ、彼なら文句ないでしょう?」

サンドラはアランの周りをぐるりと回りながら下から上へ値踏みするように眺めた

「ふん。なかなかハンサムね。・・・顔は合格。」
「デスサイズは?」


アランがウィリアムを見ると、目で促された


握った拳を振り下し、デスサイズを出現させる

「長柄の鎌か・・・」
少し考えて

「いいわ。彼にする」

サンドラはアランに笑顔を向けた。
すると鼻の上にキュッとしわがよった
キュートな人だな
アランは自分の状況を忘れぼんやりと考えた


「じゃあ10分後に、教会の入り口で!!」
「遅れないでよ!!」

そう言い残すとサンドラはさっさと出て行ってしまった

「えっ、あ、あのちょっと・・・」
状況が呑み込めずアランはその場に立ち尽くした


「あの・・・ウィリアムさん?」
「どういう・・・事、でしょうか?」

・・・・・はぁ
大きなため息とともにウィリアムは言った

「今のはサンドラといって、我が死神派遣協会の渉外課の所属なんですよ。」
「今日は彼女に付いて、外回りに行って下さい」

「・・・外回り、ですか?」
「あの・・・しかし・・・領収書の仕分けが溜まっていて・・・」

デスクを見ると、大量の書類が乗っている
それをチラリと見てウィリアムは驚くようなことを言った
「仕方ありません。それは私が処理しておきますよ」

「それに・・・」
アランは不安そうに続けた
「外回りっておれ行ったことないんですが・・・」

「大丈夫ですよ、アラン・ハンフリード。難しい任務ではありません。彼女に付いていればいいだけの事」
「ただ・・・」

ウィリアムは時計に目をやった

「おや、時間だ。時間遵守ですよ!」

訳のわからぬまま、アランは回収課を追い出されてしまった。

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