SMAP応援企画
□木村拓哉さんのCMパロ
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【シャッター閉めて】(タマホーム)
長く付き合っている恋人、拓哉が久しぶりに私を呼び出した。
「何よ」
それもなんか住宅地に。
「よっ♪」
「“よぅ”じゃあないわよ。いままで何してたのよ」
「“ハッピーライフ ハッピーホーム タマホーム♪”」
「は?」
「だーから、“ハッピーライフ ハッピーホーム タマホーム♪”」
「なによ、ばかばかばか!」
私は彼の胸板をこれでもかっていうほど殴った。
「ちょ、待てよ」
「歌ってる場合かあ!連絡もよこさないで!」
「ああ、ごめん。わりぃ。ほら、泣くなよ」
「泣くわ、このドアホ!」
ガシッと彼を追いつめ、見知らぬ家の玄関のドアホンに思いっきりぶつけてしまった。やばい!
ピンポーン♪
「げっ!逃げよう!」
「逃げなくていいよ」
慌てふためく私を今度は拓哉がガシッと追い詰める。
ピンポーン♪
「うわっ、また鳴ったよ!」
ピンポーンピンポーンピンポーン♪
私の肩や背中があたって、玄関のチャイムはひたすら鳴る。
「ちょ、やばいって、拓哉、ほんと、どいて!」
「いやだ」
「いやだって、あんた、ダメだってば!」
「聞いて、優衣」
「な、なによっ」
「“いやだ”“だめだ”は禁止にしよう」
拓哉は私を見知らぬ家の玄関に貼り付けたまんま、両腕で閉じ込めた。
「だ、だめだよう……」
「だから“だめだ”は禁止」
「ここじゃだめだってば」
「どうして?」
「どうしてって……」
「俺はここがいい。ここじゃなきゃ意味がない」
「な、何……がっ?」
私は身じろぎをした。しかし拓哉は私を両腕で囲んだままだ。
が、その両方の手が離れ、今度は肘になった。
「優衣……」
「はい、なんでしょう」
「“ハッピーライフ ハッピーホーム タマホーム♪”」
「はひ?!ふざけないでよ!?」
「幸せな人生、幸せな家庭。ふざけてなんかない」
拓哉はジーンズのポケットから鍵を取り出し、私の眼の前にかざした。
「“ハッピーライフ ハッピーホーム タマホーム♪”」
耳元で囁かれるように歌われる。
「……?」
「まだわかんねえの?じゃあ、これは?優衣」
もう片方の手がもう片方のジーンズのポケットに入り、
「ほら、目を閉じろよ」と言われた。
「な、なによっ」
「いいから、ほら。目、閉じて」
「もう、こんなところで……」
言いながらも素直に目を閉じた瞬間、唇にふわりと拓哉の唇が重なった。
(え……?)
そして。
私が目を開けようとしても、拓哉の唇がそれを許さない。
だけど。
私の左手をそっと取る拓哉の指先……その温もりを感じていた。
感じながら私は涙を流していた。
(拓哉……逢いたかったよ……)
そっと離れた唇に怨みがましくなって上目遣いになる。
そのまんま、私は玄関に押し付けられている。
「まだわかんないのかよ、優衣」
左手は右手にとらえられている。
右手は左手との間に硬い鍵が握り締められている。
私は恐る恐る掲げられた左手を見る。
薬指……
「もう、この家のチャイムのこと、気にしなくていい。ここはお前の“ハッピーライフ ハッピーホーム タマホーム”
アーユーレディ?」
「……拓哉?」
「遅くなってごめん、結婚しよう、優衣」