誓いのキスは突然に 鴻上大和

□わたしから見た大和
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【一緒に行こうかな】

「ほら、どんくさ」

大和が手を出してきた。

「なに、どんくさって」
「おま、ほんと、噛み付くよな」
「いやいや大事なことよ。
どんくさって何?ぶうこに続いて謎のあだ名つけようってこと?ぶたくさみたいな感じ?絶対やだ」
「ぶたくさって自分で言うなよ!」
「ぶうぶう」
「すでにぶたくさだな」
「はあ?!もういいもんね、私はさくさくと帰る」

早足になった私の手を後ろから大和がつかんだ。

「そっちの道はダメだ」
「なんでよっ!」
「みろ」

目の前にはでっかい文字の看板。

「工事中、立ち入り禁止……」
「だーからお前を引きとめようとして手を差し伸べたのによ」
「ああ。大和は私と手をつなぎたかったんだ」
「はあ?」
「ほーら、念願の私とお手手つなぎ、嬉しいねえ、大和」
「あ?これはたまたまつないだだけだ!お前がすぐに迷子になるからだ!」
「なってないもんねー」
「それは俺が未然に防いでるからだ」
「あ、美味しそうなクレープ屋さんだ」
「おいこら」

超私の好きそうなクレープが売られている。
これはもう、即買いでしょう!

私は大和を引きずる勢いでクレープ屋さんに突き進む。
「ぶうこ、こら!晩飯はどうするんだ?!」
「晩御飯は普通に食べる」
「クレープの後か?!」
「後でも先でも良いけど、今日は先!すいませーん。くださーい」

わたくし、新川優衣は!クレープを手に入れた。
ちゃらららっちゃちゃーん!←ステージクリアの効果音。

「んまっ!」
「太るぞ」
「太らない」

私はきっぱりと言い切った。

「太ったとしても、それは地球上における私の割合が増加しただけである」
「いなおるな」
「んま。ほーら!大和ちゃん、少しあげますよ。んと、少しだけね。私の割合が減るから」

ばくっ!

「あああああああっ!なんでそんなに大きな口で食べるの!」
「お前ばかり地球上に増えてたまるか!」
「重い女と呼ばせてやる。さあ返せ」
「ふんっ」

ばくばくっ。
大和は私のクレープを手をつなぎながら半分以上食べてしまった。

「ひどすぎる」
「……」
「究極奥義、食べ物の恨み!」

こーちょこちょこちょ
こーちょこちょこちょ

私はつないでいる手の中で指をグリグリと動かした。

「や、やめろ、ぶうこ、優衣さん、やめてください」
「ふっふっふっ。優衣さまの華麗なる手さばきを体感せよっ」

こーちょこちょこちょ
こーちょこちょこちょ


「ぶはぅ。はあはあはあ……」

息も絶え絶えな大和に私は鼻息を荒くした。

「こんりんざい、私をぶうことは呼ばせないからね」
「ああ、呼ばない。これからは鴻上優衣と呼んでやる」
「ん?」
「ん?じゃねえよ、そろそろ名字かえろ」
「えええ?!」
「色気がないなあ、お前」
 

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