ブラッド 〜血の運命に抗う者たち〜
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次の日。
グレースたちが朝食を食べていると、3ヶ月ぶりに、小柄な老人がフェアリー・ティアの扉を開いた。
ウカバだ。
その後ろには、ビクビクした表情の肌が黒い少女を連れていた。
「若僧ども、久しぶりじゃな………」
ゼェハァと息が切れた状態で大量の汗を流しながら言ったウカバの顔は、何か焦っているように見えた。
ガウナーはウカバの様子を見ると聞いた。
「おいおい、ウカバじいさん。どうしたんだ?久しぶりに来たと思ったらそんなに息切れで………それに、そこの嬢ちゃんは誰だ?」
「すまんの、ガウナー。今は説明している時間はないんじゃ。ちょいとかくまってくれ」
ウカバが外を見ると、黒服の男たちがうろついていた。
グレースも外を見て黒服を診るとウカバと少女を見て聞いた。
「終われてるんですね?その子は」
「ああ、この子はあいつらにとっては高値の商品だからな」
「商品………?」
ホワイトが水を持ってきてウカバに渡すと、それをイッキ飲みして息を整えた。
「その子は、ここリヴァイラスの隣の町カーサで、人間が魔物のオークションの商品とされていたのさ」
「魔物のオークションだと?一体全体どうなってんだ」
ガウナーが頭をかいて少女を見て言う。
少女は外を見てビクビクした状態で震えている。
そんなところに、2階からレーナが半年ぶりに降りてきた。
髪は乱れたままで、Yシャツにスカートだった。
「ちょっと、店の前で黒服の男たちがうろついてるんだけど、何かあったの?」
聞きながら辺りを見回すと、ウカバの姿があるのを見て走って近づいて抱きついた。
「ウカバおじ様!………やっと、来てくれた………!!」
「す、すまんの、レーナ。おじさん今は若い子に抱きつかれて鼻を伸ばしてる場合じゃないんじゃ」
「え………?」
レーナはウカバから離れると、少女のことや今の状況を説明されると、彼女は不機嫌な顔になった。
「じゃあ、あいつらをどうにかしないと、話したいことも話せないってことよね?」
「そ、そうなるなー………」
ウカバがコクコクと頷くと、レーナは扉を開けてみんなに「ちょっと、ストレス解消してくる」と言うと、黒服の方に歩いていった。
「ちょっと、そこのあんた。うちの店の前を歩き回って、迷惑なんだけど?」
レーナに話しかけられて、黒服の男がまず見たのは胸だった。
普通の娘とは比べ物にならない大きさの胸に鼻を伸ばした黒服は言った。
「そ、それはすまなかったな。ちょいと、人を捜してるんだ。黒い肌をした女なんだが、見てねーか?」
「知らない」
不機嫌な顔で即答するが、黒服は引き下がらずに聞いてきた。
「いやいや、特徴を聞いてからーー」
「知らないんだって、半年間外出てないんだし」
「いやいやいや、人の話をーー」
「知らないって………言ってるでしょ!!」
レーナがしつこい黒服男の腹を蹴ると、男は気絶した。
ほかの黒服男も来たが、それを全部蹴り倒して、レーナは交番に運んでいった後に、フェアリー・ティアに戻った。
すると、みんなレーナを見てポカーンとしていた。
「レーナちゃん、全部倒したの?」
「当たり前じゃない。うろちょろと目障りだったし」
グレースの質問にレーナは平然と答えると、ガウナーが苦笑いをする。
「とても、半年間引きこもってた奴には見えねー………」
「ま、まぁ、これで邪魔者は消えたし。ウカバじいさん、色々と説明お願い」
「おう。それじゃあ、初めにこの子の紹介しようか、リア・ドルフという子で、確か………ウンディーネだったか?」
本人に確認をとると、リアは頷いた。
「カーサに立ち寄った時に逃げているところを助けてな?それで、わしの戦闘力は0なんで、おまえらにこの子を守ってもらおうと思ってな。」
ウカバの言葉にフェアリー・ティアのメンバーが全員溜め息をついた。
「守ると言っても、俺たちではそこまでのことはできないぞ?」
カゲロウが言うと、ウカバはリアの方を見て、少し考えると口を開いた。
「リアをここで働きながら守ってもらったらダメか?」
「需要と供給ということだな」
ガウナーが言うと、ウカバは頷く。
リアは相も変わらずビクビクしたままでいる。
そんな様子を見ていると、レーナはリアを見てイライラした。
(何だろう、この気持ち………凄くイライラする。)
レーナがリアをジーっと見ている間に話はウカバとガウナーとマキでまとめたようで、マキがレーナに近づくと言った。
「レーナ、この子の教育係は頼んだよ?」
「は!?」
目を見開いて驚くも、話を聞いてなかった自分が悪いと思い、リアを見て渋々了承した。
「よ、よろしく………お願いします」
「う、うん………」
リアが頭を下げて言うと、レーナは頬をかいて頷いた。