ブラッド 〜血の運命に抗う者たち〜

□兄弟と天使
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夜になると、酒場はいつも通り大忙しだった。

ヴァイルは今日は接客なので、注文を聞いていたが仕事に身が入らない。

注文を間違えてしまったり、水を落としてしまう始末だ。

それを同じ接客のマキが見かねてヴァイルを呼び、奥の席に座っていたウカバの話し相手になってこいと言われ、老人のところに行く。

「こんばんは、ウカバさん。話し相手になりに来ました。」

ヴァイルが落ち込みぎみに言ってきたのを聞いて、ウカバが彼の肩をトントンと叩き聞いた。

「何かあったか?悩みがあるなら聞くぜ?」

「ウカバさん・・・!!」

目尻が熱くなりながらも自分が弱いことに悩んでいることを周りの人に聞こえないように小声で話すとウカバは酒を飲みながら聞いていた。

「クレストにも言って、スランやガウナーにも聞いたと・・・まぁ、マキに聞いても野生的なことを言われて頭が混乱するだけだろうからな」

「そうなんですか?マキさん、どんな修行を・・・」

想像するが、野生的なことと言われてもピンとこない。

「聞かねぇ方がいいな?また、包丁投げつけられるぞ」

サラっと言われて背筋がゾッとした。

溜め息をつくと、また落ち込み始める。

その様子を見ると、ウカバは何か思いついたようだが、言っていいのかどうか迷った。

「どうしたんですか?」

ウカバの様子を見て聞くと、老人は咳払いをした。

「いや、そうだなー・・・店が終わってから、レーナと新入りの3人も連れて近くの公園に来てくれ、そこで話す。」

そう言って席を立ち、料金を払って酒場を後にした。

ウカバのことは気になったが、その後は閉店時間まで仕事に集中した。


閉店後、レーナたちに掃除をしながらウカバのことを話すと、レーナは苦い顔をした。

「ぜっっっっっっったいに何か裏がある!!」

と若干震えているが、グレースたち3人は平然と公園に行くことを承諾してくれた。

ヴァイルは震えているレーナに控えめに言った。

「嫌なら、来なくても・・・」

「嫌とは言ってないでしょ!?い、行くわよ。行ってやるわよ! 」

と意地になって言ったので、5人は公園に向かうと、ウカバは古びた写真を握ってベンチに座っていた。

「おう、来たか、ガキども。」

「ウカバさん、話って・・・それと、その写真は?」

ヴァイルが聞くと、ウカバは5人に写真を見せる。

そこには、木々に囲まれた森の中で、金髪で違いは右の方は赤目で左の方は黄目の双子の子供が写っていた。

「これは、若い頃のクレストの写真じゃ。隣にいるのは、クレストの兄であるサイラス。」

「団長って、お兄さん居たの!?」

兄弟がいると言うことに一番驚いたのはレーナだった。5人の中で、一番長く居たので当然か。

ウカバは構わず話す。

「こいつは今、ヘイナというこの国の辺境の町に居る。クレストには内緒で会いに行ってこい」

「どうして、クレストさんに内緒なんですか?」

グレースが聞くと、ウカバが頭をかいて言った。

「クレストとサイラスは兄弟喧嘩をしていてな?会いに行くと言ったら、絶対に反対するからな」

「兄弟喧嘩の原因は?」

ホワイトが聞くと、両手を上に挙げた。

「情報屋を名乗っていて情けねーが、わからねーんだ。本人に聞いても、断固として言おうとしねぇ」

言い終わると溜め息をつき、5人の方を向いた。

「おまえら、強くなりたいなら、サイラスに会うことは強く勧める。あいつはクレストと同等の強さだ。いや、それ以上かも知れねぇ」

クレスト以上の強さということに驚愕したが、そこにビビっても仕方がない。

ヴァイルに迷いはなかった。レーナを本人に気づかれないようにチラッと見ると、彼女を守ると約束したことを思い出す。

「僕は行きます。強くならなきゃいけない理由があるから。」

ヴァイルの言葉に自分も思い出したのか、フンっと頬を染めて顔を背けるレーナも決心した。

「あたしも、村のみんなの仇の手がかりがわかった今、強くならなくちゃいけない・・・団長には悪いけど、あたしも行くわ。」

グレースとホワイトとブラックは互いに顔を見て頷き、姉のグレースが代表し言った。

「私たちも行きます。今のままじゃ、勝てない相手も出てくる。負けたくない」

真剣な表情で言う3人が言うと、ウカバは微笑んだ。

「あいわかった。じゃあ、クレストは俺が昼に外に連れ出すから、その内にスランたちに見つからないように酒場を出て、ヘイナに向かえ。」

「「はい!!」」
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