ブラッド 〜血の運命に抗う者たち〜

□見えぬ者 見る物
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受付には多くの人が居て、体つきから格闘家とか、武道かと言った類も居れば、ただのごろつきっぽい人も居た。

その中で、ヴァイルはガウナーとマキの間に挟まれてエントリーをしていると、受け付けの人に「お子さんですか?」と聞かれる始末、それほどまでに体格差があるのだ。

ガウナーがヴァイルを励まそうと頭に手をポンッと置いて

「まぁ、体格や体つきは関係ないぞ?あそこを見てみろ。」

ガウナーの指差す方向を見ると、ローブを被った自分と同じか少し下くらいの身長の人が居た。

どうやらその人もエントリーするらしい。

受付がローブの人を笑うと、一瞬何が起きたかわからなかったが、受付がローブに蹴られたらしい。

受付は地面に倒れると、咳をしながらローブに謝罪する。

「すまなかったな、えーっと・・・・・名前は」

「ホワイト」

ローブが名乗ると、早速エントリーシートに名前を書かれた。

声から察するに女らしい。

「期待してるぞホワイト、俺を蹴り倒したんだからな?」

ホワイトは受付の言葉を無視してその場を去った。

マキは去っていくホワイトを見ると小声で言った。

「あれは、うちらと同じ感じがする・・・・・・人間じゃない」

マキの呟きにヴァイルとマキは反応すると、ホワイトをもう一度見る。

ローブで顔と身体を隠していて体格はわからないが、オーラと言うか、そう言う物が見えた。

どうやら、半吸血鬼になってから、そう言うのは敏感に感じるらしい。

「どうするんですか?追いかけます?」

ヴァイルが聞くと、マキは首を横に振った。

「どうせ明日にはまた会えるんだし、実力を見せてもらおうかな?」

「3人一組何だから、ほかの二人もそうだといいんがな」

二人の会話を聞きながら、ヴァイルはあることを思い出した。

この前聞いたオガッシュ大臣への襲撃にはまだ戦力が足りないとクレストが言っていた。

なら、少なくともあのホワイトと言うローブの人は戦力になると良い。

ヴァイルはそんなことを考えながら、フェアリー・ティアに戻った。

         * 

その夜、酒場が閉店した後、ヴァイルは明日の料理の下準備を手伝っていた。

明日はレーナが調理をするらしい。

それで、ほかの皆には頼みにくいらしく、ヴァイルに命令口調で手伝わせた。

お互い向かい合って下準備をしていて、ヴァイルの手先を見ながら何か言いたげなレーナに恐る恐る話しかける。

「えーっと、ごめん、どこか間違えてる?」

一応、明日のメインメニューの牛肉料理だから、盛り付けのために野菜を切りながら聞くと、レーナは意表をつかれたようにピクッとなる。

「べ、別に?間違えてはないけど・・・・・と言うか、あんた何でそんなに手先が良いわけ?」

レーナがジトーッとヴァイルが切ってそろえた野菜と自分の切った野菜を見比べる。

ヴァイルのは綺麗に角とかを落としているが、レーナのは切り方が雑だった。

「いやー、この前クビになったバイトがレストランだったんだ?だから、そこのコックの切り方を見よう見まねでやってただけだよ。」

少し照れながら言うヴァイルにレーナは少しムカッとした。

「私だって、本気を出せばもっと丁寧に切れるつーの!」

そう言って、野菜を取って切っていくが、やっぱり雑。

ヴァイルが見かねてレーナの隣に立つと、「代わって」と言ってやり方を教える。

レーナはマジマジと見ていると、悔しいと思いながらボソッと言った。

「ありがとう」

「え?」

声になるかならないかくらいの声だったため聞き取れず、ヴァイルが聞き返すと

「余計なお世話って言ったの!ほら、早く終わらせるよ!」

グイグイっと肘で退けと言われ、ヴァイルは複雑そうな顔をしながら向かいに戻り、レーナの手先を見ていると、自分と同じやり方をしていたため、クスッと笑ってしまった。

それに気づいたレーナが

「何がおかしいの?」

不満そうな顔で聞いてきたので、悪い意味ではないという意味で首を軽く横に振る。

「いや、レーナ先輩は素直だなーって思ってね?」

先輩と言う単語を聞いてカァーッと顔を赤くした。

「だから、調子に乗るなって言ってるでしょ!!」

恥かしくてヴァイルから視線を逸らして言う。

「ごめんなさい、先輩」

もうちょっと遊んでみようともう一回先輩と言うと、レーナは耳まで真っ赤になった。

「もう・・・・・ヘタレのくせに生意気!・・・・・それに」

レーナは一旦区切ると、涙目になりながらヴァイルを上目使いで見た。

「先輩なんて呼ばれたくない・・・・・・同い年くらいなんだしさ」

恥かしそうに言うと、ヴァイルはレーナの顔を見ると目を逸らしてしまい、一瞬可愛いと思う。

「な、ならさ・・・・友達ってことにしない?僕たち」

ヴァイルは目を逸らしながら提案すると、レーナは一瞬何て言っていいかわからず聞いた。

「・・・・・・・良いの?」

「良いって言うか、僕は・・・・・友達だと・・・・思ってたような気がする。」

ヴァイルの曖昧な答えにレーナはジロッと彼を見た。

「何その意味わからない応答、はっきりしなさいよ!」

「はい、思ってます!!」

声に圧倒されてついピシッとなって答える。

すると、レーナは目を逸らした。

「へ、へー、思ってたんだ〜、ふ〜ん、じゃあ、なってあげてもいいかな〜?友達に」

遠まわしになってくれと言っているレーナに対して、それに気づかなかったヴァイルは控えめに言った。

「あー、いや、レーナが嫌なら僕は別に・・・・・」

その応答が不味かった。

ヴァイルはレーナの怒りを買ってしまい

「別に嫌だって言ってないでしょ!!なりたいの!?なりたくないの!?」

「な、なりたいです!!」

また圧倒されてしまい、このままだと包丁を投げられそうで、ヴァイルは勢いで答えてしまった。

すると、レーナはうれしそうに大きい胸を張って

「そう、ならなってあげる!あんた友達少なそうだし、感謝しなさいよね!」

明るい声で言ってきたレーナに、ヴァイルは微笑んだ。

「うん、ありがとう、レーナ」

二人の会話が終わると、厨房にスランが入ってきて

「おまえら静かにしろ!!何時だと思ってる!?近所迷惑だ!!」

二人は深夜に小一時間も話していたらしい。
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