ブラッド 〜血の運命に抗う者たち〜
□兄弟と天使
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ラーナスの辺境の町ヘイナ。
ここは豊かな自然に溢れており、多くの魔物も隠れて生活している。
そんな町が建物が崩壊し、魔物や人の死体が辺りに散らばっている。
そんな中で立っているのは2人。
一人は茶髪に赤と青の双眼をした半吸血鬼の青年ヴァイルと、黒髪で白い制服に身を包んだ青年イスターだ。
「どうして・・・僕以外の人を殺したんだ!僕を付け狙うなら、僕だけを攻撃すれば良いだろう!」
ボロボロの体になりながらも抵抗するヴァイルに、周りの死体を見ながら溜め息をついた。
「それはな、ヴァイル・レストール。おまえがーーー」
イスターの言葉を最後まで聞くと、ヴァイルは目を見開いた。
「そんな・・・僕が・・・!」
イスターはヴァイルの反応を見ると、制服を脱ぎ、背中から純白の翼を出した。
「裁きの時間だ。裏切り者」
*
時は一週間ほど遡り ラーナスの情報都市 リヴァイラス。
そこでそこそこの人気がある酒場フェアリー・ティアはラーナスで恐れられている殺人集団ブラッドの隠れ場である。
今、閉店したフェアリー・ティアの中で、クレストを囲んでヴァイルにレーナ、グレース、ブラック、ホワイトの5人が座っていた。
「クレストさん、僕たち・・・強くなりたいんです!どうしたら良いですか?」
真剣な面持ちでヴァイルが聞くと、クレストは頬をかきながら
「いやー、ヴァイルは強いと思うぞ?ヴァイルだけじゃなくて、ほかの4人も」
冷静に言うと、バンッとテーブルを叩いてレーナが言った。
「あたしたちが言いたいのは、12使徒と戦えるくらい強くなりたいってこと!」
レーナの言葉で理解したのか、クレストは手をポンッと叩く。
「自分の力を磨くしかないな」
クレストの言葉に5人全員ドテッと転けてしまい、ブラックとホワイトが叫んだ。
「それはわかってるんだよ!」
「知りたいのはその方法なの!」
若干クレストを睨みながら言うと、グレースが二人をなだめて言う。
「クレストさん、何か飛躍的にパワーアップできる方法は在りませんか?」
グレースが穏和な感じで聞くと、クレストが考え始めた。
「実戦経験しかないな。それとか、戦いのプロに教わるとか」
5人が後半の方に食い付いた。
「「 そんな人が知り合いに居るんですか!?」」
「いや?俺は居ないけど」
5人が聞くと、あっさり否定した。
ヴァイルたちは一斉に溜め息をつくと、クレストがやれやれと言った顔で言った。
「あのなー?そんな、すぐに強くなれる方法なんて、後で副作用が起きたり、自滅するっていう公式が当てはまるって決まってんだよ。地道に強くなれ」
クレストのもっともらしい言い方に少しムッとし、レーナが聞いた。
「じゃあ、店長はどうやって強くなったの?」
素朴な質問をすると、クレストは苦い顔をし
「・・・言いたくない ?」
と説明を拒否して立ち上がった。
「俺よりも、努力の面で言うならスランやガウナーに聞いてみろ。俺なんかよりもよっぽど役にたつぞ?」
そう言って、二階に上がって行った。
次の朝。午前中は武器であるジャックナイフを30本手入れしていたスランに、午後は筋トレしていたガウナーに話を聞いたが、二人ともやり方が違った。
スランは最初にナイフの技術を自己流で習得し、その後に、クレストだけが知っている能力を磨いたらしい。なんでも、ナイフと掛け合わせて使うらしい。どんな能力かは見せてもらえなかった。
ガウナーは能力を持っていて、それを100%使えるように毎日筋力トレーニングをしているらしい、こちらも危険だからと見せてもらえなかった。
ヴァイルは聞き疲れて、酒場のテーブルに突っ伏して溜め息をついた。
二人の話を聞いて共通しているのは、能力を軸にして鍛えていること。だが、ヴァイルの能力は体から武器を生成して戦うことだけ、自由に動くが、それだけだ。
ヴァイルは左目をおさえる。
「せめて、こっちの力も使えたらな」
吸血鬼の力以外にも、何故かわからないけど黒い翼を出して飛行することはできるが、それだけじゃ駄目だ。もっと、それ以外にも使える力はあるはずなのに。
「ヴァイル、大丈夫?」
心配そうな顔でこっちを見るホワイトに笑顔を作った。
「大丈夫だよ。ただ、ちょっと疲れただけで」
ヴァイルの様子を見て、ホワイトは元気づけようとチョコレートを持ってくる。
「はい、あげる。ヴァイルは頑張ってるから、ご褒美」
年下の子からご褒美と言われ、少し苦笑いしながらも礼を言って受け取る。
「ヴァイルは強くなる可能性あるよ。私なんて、目が良いだけだし。サポートをするぐらいしかできないから。」
「そんなことないよ。ホワイトの目は頼りになってる。」
「そ、そうかな・・・」
ヴァイルの言葉に少し照れ、恥ずかしくなって2階に上がった。