ブラッド 〜血の運命に抗う者たち〜

□その物たちの名は
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多分、僕ほど理不尽と言う言葉が似合う人間はほかにはいないと思うのが、この一週間の感想である。

この一週間、ギャングにはぶつかって半殺しにされそうになるわ、金を払っても「まだ足りないね〜」と財布ごと取られるは、バイトでは身に覚えがない失敗を自分のせいにされてクビになってしまった・・・・・。

どうして僕のいる世界、こんなに理不尽なことが多いんだろう。

そんなことを考えていると、またも柄の悪い黒服の男が僕の方に来る。
よっぽど、僕は鴨になるようだ。

そりゃあ、ボロボロの服を着た茶髪のいかにも文系男子ですというような風格と、喧嘩ができるような根性がないように見える僕、ヴァイル・レストールはそう言う運命ですとレッテルを貼られているようなものだ。

黒服の男は近づいてくるなり、わざと僕にぶつかってきた。

「おい!クソガキ!何ぶつかってきているんだ?喧嘩売ってんのか?」

僕の胸ぐらを掴んできてはそう言ってきた。

体は反射的に震えてしまい、抵抗出来る気力もない、また半殺しにされるんだろう。

「口は付いてんのか?謝罪の一つもねーのかよ!」

男は拳を握って、僕を殴ろうとしたとき。

「そこのチンピラ、その手を離せ」

突然、男の人の声が聞こえ、僕の視界は暗くなった。

その暗さは一瞬で消えたが、次の瞬間には男は倒れていた。

萎れた果実のように目を開けたままやせ細っている。生気と言うか、血を吸われているかのように。

「君、大丈夫?」

男の代わりに僕の目の前に立っているのは、金髪で赤い目をしている黒いコートに身を包んだ男の人。

この世の全てを包み込むようなその微笑みは、僕に向けられている。

「あ、の・・・・」

僕は返事をしようとしたが、次の瞬間、力が抜けて、気を失って倒れてしまった。

「あ、大丈夫ではなさそうだな」

金髪の男はヴァイルのことを背負ってくれた。

この人、いや、後々知ることになる「魔物」が、ヴァイルのこの理不尽を壊す道筋を示してくれることに、今のヴァイルには気づくことはなかった。
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