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□思い出
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エースが小さくなった。

グラントラインでは普通が普通でない。突然の雷に打たれたエースは、煙に包まれそれが晴れると幼いエースが現れた。


いつの間にか知らない船で知らない大人たちに囲まれてエースは酷く荒れた

「ここはどこだよ!!俺を連れてきたってなんにもなんねぇぞ!!!!」

怯えを必死に隠し、虚勢を張って周囲を睨みつける。
どうにも説明のしようがなく、誰もただ見ているだけだった
…が、




「ふぁ〜あ、なんなんだ?ザワザワ騒いで…」
書類整理で徹夜したらしい紅葉が髪をかきあげながら出てきた。眠たげに細められた目もお世辞にも優しそうとは言い難く、周りに冷たい印象を与えていた。

「ん?あー、なるほど。」

小さなエースを見て瞬時に状況を理解したらしい。
周りからどうにかしてくれ、と縋る様な目線で見られ、「(ガキは苦手なんだけど…。)」と返しつつ小さな影に近づく。が、やはり見た目のせいかそこら辺の男よりも怖そうな雰囲気にエースの恐怖の色も色濃くなる。

「なぁ。」
「…」
「そう睨むなって、何もしねぇよ」
「信用できるか!!」
「まあそれもそうだな」
「っ…!?」
「「「「(あっさり認めんのかよ!!??)」」」」
「信用しなくていいから、ご飯行こーぜ。」
「はぁ!?」
「突然のことで何もわかんねぇだろうけど、心配すんな。とりあえず腹ごしらえしねぇことには始まらねぇだろ?」

タイミング良く鳴った腹の音に眠たげに微笑むと、顔を赤くしてそっぽを向いた。

「私は紅葉。お前は?」
「…エース」
「エース、ご飯、行くぞ。」

スッと手を差し出すと指を一本だけ掴んだ。

食堂で最初は警戒していたエースも、紅葉が食べて、同じものをよそって差し出すと美味しかったのか大人の時と変わらない食べ方でガツガツ食べ始めた。
その横で軽く腹に収めただけの紅葉はコーヒーを優雅に飲みながら、エースの頬についたご飯粒をとってやる。

驚いたように顔をあげたエースに

「いっぱい食べろよ」

そう言って口についたソースを拭ってやる紅葉を見て目を見開くと何故か顔をクシャっと歪めて、またかきこみだした。


ものの数十分で、手負いの獣のようだったエースを落ち着かせた紅葉の相変わらずの手際の良さに周りも驚いていた。

他は遠巻きに眺めるだけなので必然的に、エースが懐くとまではいかなくても紅葉に付きまとうようになった。

二人の間にこれといった会話はなく、あまり笑顔もない。
沈黙の中でもエースは嫌な気はしなかった。

忌み子、鬼の子として扱われる存在であるエースをいい意味でも悪い意味でも特別に扱わない。
親切じゃないけど転びそうになったら助けたし、移動する時は物や人にぶつからないように注意したりとよく気にかけ、話す時の目には暖かい優しさが滲んでいた。

「…変な奴。」
「ん?」
「なんもねぇよ!」
「そうか。もう少し待ってくれ、そしたら釣りでもしよう。」
「釣り?」
「暇だろ?……よしっと。さ、行くか」

釣りをして濡れたついでに風呂に入る。
「風呂入るか。」
「ふ、風呂!?」
「おい、紅葉一緒に入るのか?」

聞き耳を立てていたサッチが慌てて口を挟む。

「そのつもりだが…嫌か?」

エースを振り返ると、

「女と一緒になんか入れるか!!」
「じゃあそこのサッチと入るか?」
「うっ…」
「いや、うっ…ってなんだよ!?」
「風呂で滑っても危ないし、流石に一人はな…。辛抱しろ。」

そう言ってエースを抱き上げた。

「降ろせ!」
「床が濡れるだろ?」

顔を真っ赤にして暴れるエースをものともせず、スタスタ歩き去った紅葉をサッチはぽかんと見つめた。

「(柔らかくて、温かい…)」
暴れ疲れたエースはこの温もりがむず痒かった。
母親がいたらこんな感じなのだろうか
布越しの体温にまたクシャっと顔を歪めた。

一度知ってしまうと離れ難くなる。
それを悟ったエースは必死に距離を置こうとするも、紅葉は一定の距離以上離れない。


むず痒くて
心地よくて
戸惑って
安心して
このあと自分はどうなってしまうのか


グチャグチャになった心を整理することもできず余計にエースを苛立たせる。

「エース今かr…「うるせぇよ!!!俺に構うな!!!!」…?」

腹も落ち着いて和やかになってきた食堂の入口でエースの大声が響く。一気に静まり返った周りに気付くことなくエースは堰切ったように怒鳴る。

「なんで放っておかねえんだよ!!??俺は…大悪党の息子だぞ!?俺を誘拐したくせになんでかまうんだよ!!!」

顔を顰めて拒絶し続けるエースと、それを真っ向から受ける紅葉に視線が注がれる。

「誘拐…ねぇ。信じられないだろうからそう思ってていいぞ。
あとお前が誰の息子だろうと、んな面倒なこと私は気にしねぇし
そんな細かいこと気にする奴なんざこの船にはいねぇよ。」

エースの眉間にしゃがんだ紅葉白く細い指が当たる。

「お前はお前だ、胸張って生きろ。
それと放っておかねぇのは……お前が私の弟で家族だから。」
「…っ!?」

ツンっと軽く押されたエースは驚いたまま言葉を出せずにいる。

「この船で受け入れられたらそいつは家族だ。血なんか関係なく、な。
むず痒いもんも直に慣れる。手放したくないならしっかり捕まえておけ」

ポンポンと頭を軽く叩くと泣きそうになったエースの顔。
周りのやつも凶悪な面を笑顔の形に歪めてエースの頭を軽く叩いたりぐしゃぐしゃにかき混ぜたりとエースに触れる。

「末っ子のくせに意地はりやがって!」
「甘えとけ、エース!」
「紅葉に構ってもらえるなんて羨ましいぞ!エース!」

知らない内に涙が溢れそうになったエースは歯を食いしばった
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