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□こっそり
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「……………………………………」
「…ねえ、すっごい顔してるけど大丈夫?分かってる?」
「わからねー。」
どしたものか…。そんなことを考えながら私は目の前に座る彼を見つめる。
テスト期間で図書館の利用者の大半が勉強している。その例に漏れず私と彼…影山飛雄もここで勉強している……が、彼の勉強が一向に進まない。
その証拠にいつも異常に眉間にシワがより問題を睨んでいる。
先に言っておくけど私達は付き合っているわけではない。ただクラスが同じで席が近く、たまに課題を手伝う程度。
でもその"たまに"を見ていた担任とバレー部の顧問らしい眼鏡をかけた若い先生(武田先生というらしい。)に頼みこまれた。
正直面倒だけど彼のことが少し気にかかってたのも事実…渋々ながら了承したのは昨日。
とりあえず図書館でやろうとここに座り、数学の基礎問題を解いてもらおうとしたら……この有様だ。
「(こりゃ時間かかりそうだな…。)とりあえず公式から復習しようか。」
教科書を手に取りパラパラページを捲る。彼は若干がっくりにしつつももう一度背筋を伸ばした。
「ワークは少し置いといて、ノート出して」
「ノート?」
「うん、ルーズリーフでもいいから。公式とかやり方を書いといたら後で分からなくなっても思い出せるでしょ?」
「…あー。」
少し納得したようにノートを取り出した。男文字で数学と書かれたノートは新品じゃないかと思うほどピカピカで、中もまだ全然書き込まれてなかった。
「授業と進め方変えてもいい?」
「お、おう。」
私たちの数学の教科担任は問題を出してその中に公式を書いて解き方を教える。でもそれだと分かりにくいような気がして、私は自分のノートは板書とは少し違う。
「この問題を解くときに使う公式はこれ。まずこれをノートの一番うえに書いて。」
「わかった。」
「…。そう、で ここをマーカーで…」
机から身を乗り出し公式を囲む。
「で、さっきのこの問題はここがポイントで…」
「お、おお!!」
逆さで少し字が汚くなるけど線を引っ張ったりすると、彼の目が輝いてきた。つい課題を手伝ってしまう理由はここにあるかもしれない。
わからないことがわかった瞬間のこの顔を見ると嬉しくなる。