風見鶏
□痛みわけ
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「ーーー以上で今日は解散!
各自しっかり休むように!」
遠征が終わり現地解散と同時に、ちょいちょい、と肩をつつかれた。
振り返ってみるとそこには、アクロバティックがお得意の猫みたいな先輩。
「お疲れ様です、英二先輩!」
そう声をかけると英二先輩は白い歯を見せてニカっと人懐っこい笑みを見せた。
「エリ〜!おつかれ!!
ねえねえ!このあとハンバーガー食べにいかにゃーい?
タカさんと不二も行くんだけどさぁ〜!」
「わぁ!行きたいです!
だけど私これから色々片付けしなくちゃいけなくて、明日の準備もあるし。ごめんなさい…」
「ほえ!そっかぁ〜残念だにゃー。
…あれ?明日ってなんかあったっけ?」
「明日から新入生の仮入部が始まるんだよ、英二。」
「あっ!そっかぁ!今年はどんな子が来るかにゃ?」
すっかり忘れてた、と反応を見せる英二先輩が微笑ましくて、不二先輩と顔を見合わせて笑った。
「あ、なら学校まで一緒に戻ろうよ!
荷物とか俺が持つよ。」
「そんなダメです!タカさん、試合して疲れてるんだからしっかり休んでください!」
「全然大丈夫だよ。
どうせ同じ方向に帰るんだし、それにトレーニングにもなるし!」
「そうそう!こういう時は、甘えておけばいいんだって。」
そういってタカさんと英二先輩はひょい、と荷物を持ってくれる。
荷物といっても私個人の荷物は、今私が持っているカバン一個だけ。
あとは全部クーラーボックスとかボトルとかタオルとか。
私のものじゃないけど、これらの管理をするのもマネージャーの仕事だから。
運んだりするのも私がするべきなのに、先輩たちは毎回手を貸してくれる。
試合して疲れている先輩に荷物を持ってもらうのが本当に申し訳なくてなんとか断ろうとするけれど、こんな風に言われてしまったらお願いするしかない。
「そ、それなら、その、よろしく、お願いします…。」
眉を下げてペコリと頭もさげる。
本当は部員の体調管理も気にかけなくてはいけないのに、逆に私が気を遣ってもらってしまった。
うぅ、私ってマネージャー失格…。
落ち込んでいると頭にぽんぽん、とあやすように手が置かれた。
「僕たちが好きでやってるんだから、気にしないの。ね?」
そう不二先輩に言われ、ニコリと安心させるような笑顔を見せてくれる。
「……はいっ!」
私もつられて笑顔になると、また先輩たちも笑ってくれた。
――あたたかい。
そんな幸せな気持ちで、不二先輩とタカさん、それに英二先輩と一緒に、青春学園へ向かった。