風見鶏

□桜散る、夢
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――キーンコーンカーンコーン




遠くでチャイムが鳴った瞬間、勝負はついた。




「ゲームセット!」



審判の試合終了のコールが響き渡る。


スコア表をつけ、タオルとドリンクを持って今しがた試合をしていた人物に駆け寄る。


お疲れ様ですと声をかけ、タオルとドリンクを渡す。


「ふふ、ありがとうエリ。」


「あ、あとこれ。今日の試合のスコアです。
よかったら見てください、不二先輩。」



ニコニコとスコア表を受け取る不二先輩。



その瞬間、桜の花びらがはらり、と目の前をよぎった。

花びらが飛んできた方向を見上げると…大きな桜の木。








―――なんて、うつくしいの。









思わず目が離せずにいたが、竜崎先生の集合の掛け声で我に返る。


今の不二先輩のシングルスで、今日の練習試合は終わりのようだ。




学校へ戻ったら部室へ行って、色々お片付けをしなくちゃ。
あぁそれと、明日から始まる新入生の仮入部の準備と、ひとり置いて行かれて拗ねているクセモノの機嫌もとらなければ。


まだ右足の捻挫が治ってないというのに、強引についてこようとした彼を説得させるのはどれほど大変だったことか。

最終的に渋々納得はしてくれたが、きっとまだ帰らずに学校のコートにいるのだろう。



これからの予定を頭の中にメモをしながら、青春学園テニス部レギュラー陣のもとへ向かった。









 ――桜の花びらが散る姿は、美しくも儚く

  それはまるで 現のようだった。――
 

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