other

□いただきます
1ページ/1ページ



「あ、シーたんお帰り!」
「ただいま」

玄関に向かってケタケタ楽しそうに話す可哀相な奴がいるな、と思ったらクレアだった
手をぶんぶん振ってるが生憎と両手が荷物で塞がっていて返せないから頷いておく

「おかえり、ロス」
「ただいまです」
「っとと、俺そろそろ帰るな」
「ん、またな」
「おー!」
「お気をつけて」
「ばいばーい!」

クレアと喋っていたのであろうアルバさんが俺を見遣りふわりと笑う、殴りたいこの笑顔
然し両手が以下略だから殴れなかった
時計を一瞥して少し慌てた様子のクレアに挨拶をした後家に入る
踏み台に荷物を置いて靴を脱いでいると上から声が掛かる

「今日てっちりだよー」
「マジですか、やった」
「奮発したからね」
「楽しみです」
「更に鮑もある」
「…本当に奮発しましたね」

今日無駄に豪勢だな
何かあったのか、と疑念を頭の片隅に抱えつつ靴を棚に直してスリッパに履きかえる

「ルキー?ロス帰ってきたよ」
「本当!?」
「お出迎え行っておいで」

奥の方からそんなやり取りが聞こえた直後、とたとたと走る音が聞こえた
シューズクローゼットから出てリビングの方を見遣れば満面の笑みでこちらへとぱたぱた走って来るルキ
僅かに頬を緩めつつ手にしていた荷物を一旦置いておく

「ロスさーん!」

両手を広げて駆け寄ってくるルキをこちらも両手を広げて待つ
近くまで来ると脇に手を入れてひょいと抱き上げると同時にぎゅううっ、と抱きしめられた

「おかえり!」
「ん、ただいま」

外がとんでもなく寒かったのもあってかルキが湯たんぽ並にあったかい
思わずそのあったかい頬に擦り寄ればルキからも頬をすりすりとしてきた

「ロスさん冷たいねー」
「外寒かったから」
「私の体温がロスさんに伝染しますよーに!」
「病原菌みたいな言い方だな」
「ルキ病原菌だね!」

ころころと鈴の音みたいな声音で笑うルキの頭を撫でてやる
くすぐったそうに頬を緩めつつ掌に頭をすりすりと寄せてくるからわしゃわしゃ乱雑に撫でる
少しして一旦頭から手を離してちゃんと抱き抱えてから

「…ぎゅー」
「むぎゅー!」

二人してぎゅうぎゅう抱きしめ返す

「ロスー?ルキー?早くこっち来なよ、寒いだろー?」
「「はーい」」

ルキを床におろして荷物を片手で持ち、反対の手でルキの手を握る
リビングの扉を開けてもらい入ればふわりと体を覆うように暖かい空気が肌を撫でた

「生き返る…」
「外寒かったもんなぁ」
「こったつ、こったつー!」
「アルバさんポン酢取って下さい」
「ん、どーぞ」
「お箸も取ってー!」
「ルキはまだフォークじゃなきゃダメ」
「えー…」
「…もう食べていいですか」
「あぁ、ごめんごめん」
「先にいただきますするの?」
「ロスお腹空いてるんだよ」
「分かったー」
「…じゃあ、」
「うん!せーのっ」
「「「いただきます!」」」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ