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□致死量の愛情を
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行き先も伝えられないまま、一般人が住まう街に赴き暮人から三歩ほど間を開けて歩く
二人とも普段着に身を包み歩くのはなかなか新鮮だった

「隣に来ないのか?」

わざわざ立ち止まって振り返ってきやがったから俺も距離を保つ為に立ち止まる

「お前と並んで歩きたくない」
「何故だ?俺と並んで歩けるなんて光栄だろ」
「はっ、言ってろキザ野郎」
「…まぁいい。嫁は夫を立てる為に三歩下がって歩くものらしいしな」

言い終わらないうちに早足で開けていた距離を詰めて隣に立つ

「俺とは並んで歩きたくないんじゃなかったか?」
「うるせえ。お前が催促するから仕方なく歩いてやってんだよ」

赤い目が細められて笑みが向けられる
それを一瞥してフンと鼻を鳴らせば小さく暮人が笑って、足を進行方向に向けて歩き出したから俺も足を進める

「…つかいい加減行き先くらい教えろよ」
「そう急かすなよ」
「早く帰って寝たいもんで」
「もうすぐ着く」

そう言って突き当たりの角を右に曲がった
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