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□致死量の愛情を
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「グレン」
「………」
「グレン」
「……………」
「おい、グレン」
「…んだよ」

徹夜明けの会議でくそ眠いってのに、嫌がらせかよ
頭上から降り注ぐ不快極まりない声を無視し続けていたわけだが、一向に折れる気配を見せなくて腹立つことに俺が折れてしまった
こいつ本当嫌な奴
相変わらず澄ました顔しやがって

「やっと起きたか」
「お前のせいでな」
「そうか、なら良い」
「良くない」
「さあ、今から出掛けるから準備しろ」
「ふざけんな帰れ。俺はもう一回寝る」

命令すんな、内心で悪態をつきながら暮人に背を向ける様に寝返りをうって布団を口許まで引っ張りあげ目を固く閉じてやった

「寝るな、起きろ」
「………」
「グレン」
「………」
「………」

完全無視を決め込んでいれば珍しく諦めたのか急に無言になった
漸く眠れると本格的に意識を手放そうとした、瞬間

「!?」

肩を掴まれたかと思うと仰向けに転がされマウントポジションを取られた
見下ろす冷ややかな赤い瞳を細め口許に愉快げに笑みが浮かべると、両手首を頭上で一つにまとめられ痛いくらいの力でベッドに縫い付けられた
ワイシャツの隙間から空いたもう片方の手を滑り込まされる

「お、おいどこ手入れてっ、ん…」

蛇が這うように、じっくりと腹を這う様に撫でられれば肩がびくりと跳ねて思わず眉を顰めた
その反応に気を良くしたのかなんなのか、腹部を撫でる手は上へと動かされ人差し指と親指で突起を摘み弄ぶ様にいじられる

「ァ、やめっ…んんっ」
「やめていいのか?段々固くなってきたぞ、ここ」
「はぁっン…あッ、く…!このっ、やめろクソが!!」

束ねられていた手に力を込め勢いのまま振り払えば前傾させていた身を引いて肘を避けられる
相変わらず、余裕そうな笑みを浮かべたまま

「起きる気になったか?」
「このクソ野郎が…マジで一回死ねよ」
「はは、それは無理だな。死ぬならお前のほうが先だよ」
「…退けよ。起きたくても起きれねぇだろ」
「あぁ、今退く」

暮人が上から退くとほぼ同時に上体を起こす
全く最悪の目覚めだった
当てつけのように不機嫌さは隠しもしないで表情に出したまま、布団を捲りあげベッドから下りる

「グレン」
「あ?」
「寝癖ついてるぞ」
「触んな」

と伸ばされた手を払い落とすと、パシンと乾いた音がした

「で?どこ行くんだよ」
「ちょっと買い物にな」
「買い物…?」

今更だが、よく見ると暮人の格好は軍服ではなかった
会う度いつも軍服だから、普段着が軍服なんだと思っていたけれど違うようだ
なら此方も服装をある程度合わせなければいけない
こんな奴の為に服を選ばなければならない事にまたイライラしつつ辟易とした気持ちでクローゼットを開ける

「そんな事柊様がしなくても、部下がしてくれるんじゃねーの?」
「日用品とかの、ただの買い物じゃないんだ。それに完全に今回は私用だしな」
「なんだそれ、なら一人で行けよ」
「お前が一緒じゃないと意味がないんだよ」
「はぁ?」
「着いてくれば分かる。それより、もう準備は出来たのか?」
「したくないって言ったら?」
「なら次は公開プレイでもしてみるか、先ずは深夜あたりに─」
「すぐに準備します」
「あぁ。早くしろよ」

楽しそうに微笑を浮かべたまま腕を組んでベッドに腰掛けるクソ野郎を横目に一瞬睨みつけ、視線をクローゼットに戻して溜息を吐き、服の袖に腕を通しながらしみじみと思う、本当嫌な奴だと
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