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□飼い犬が牙を剥く
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最近全然グレンに会ってない。会話も、最後にしたのはいつだったかも思い出せない
家を留守にして一週間帰って来ないなんてのはしょっちゅうだったけど、一ヶ月近くも帰って来ないのは初めてだった

「なあ、シノア」
「なんですか?」
「バカグレンの居場「知りませんよ」……そっか」

やれやれと肩を竦め、両手を挙げて隣で溜息をつくシノアを横目に机に突っ伏する

「優さんは本当に中佐が好きですね」
「るせえ。嫌いだあんな奴…」
「あ、中佐─」
「グレン!?」

殆ど条件反射でバッと顔を上げて周りを見渡すが、グレンの姿はない
隣ではニヤニヤと口を隠して笑うシノアが、立ち上がった俺を見上げている

「の従者の方がさっき廊下を歩いてました」
「っ、紛らわしい事言うな!」

完全に嵌められた
そんなタイミング良く、都合良くグレンが戻って来るはずなんかないのに
これは相当重症だ

「勝手に反応したのは優さんじゃないですかぁ」

楽しそうな声でからかうシノアを睨みつけながら着席する
と、そこで頭上から始業の合図が響きグレンの従者─小百合が教室に入って来て

「授業ですよー。席に着いて下さーい」

と告げれば、立っていた生徒や廊下に出ていた生徒がぞろぞろと自席に移動し始めた

「じゃあ、私も席に戻りますね」

そう言ってシノアが立ち上がる
さっさと戻れの意味も込めて頬を杖をついたまま顔を背けてやったら、また頭上から溜息が降ってきた
出席確認が終わると、また眠い眠い授業が始まった
欠伸を我慢することなくもらし、一応ノートと教科書だけ広げて、何も書きもしないのに持ったペンで白いノートを叩く

「……早く帰って来いよ、バカグレン」

深い溜息を吐き出して、息を吸ったら制服からアイツと同じ柔軟剤の匂いがしたから、また心臓がキュッとなって顔を思い切り顰めてやった
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