殺せんせーの事なんて全然好きじゃないんだからねっ!
□ぜろ
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ガラスの花瓶にそっと水を注ぐと、細く女性らしい手は揺らめく水面に花を活ける。
誰も居ない教室で、朝の光が小ぶりの花瓶に反射して輝いた。
彼女…霧島月花は、花瓶を持ち上げると静かに教卓の上にそれを置く。
「別にせんせーのためじゃありません家の花が余ったから有効活用するだけですし安全な置き場が教卓しか無かったから仕方ないんです大丈夫せんせーのためじゃありません」
見えない誰かに必死に言い訳しながら。
「おはようございます…おや、今日はヒナゲシですか。いつもありがとうございます、霧島さん」
ぬるぬると教室に入ってきた殺せんせーが、教卓の上の花を見て嬉しそうに笑った。
最近、殺せんせーの教卓には日替わりで小さな花が置かれている。
家が花屋だという月花ちゃんが、毎朝早くから花瓶に活けているらしい。
「別にせんせーのためじゃありませんから。売れ残った花が可哀想でしたから」
殺せんせーに名前を呼ばれると、そっぽを向いて冷たく言う月花ちゃん。
僕はその頬がほんのり色づいているのに気付いた。
彼女は、どういうわけか殺せんせーに好意を持っている。
端から見ているともの凄く解りやすいけれど、本人は隠し通しているつもりらしい。
一方殺せんせーはというと、
「そうですか…ヌルフフフ」
月花ちゃんの冷たい言葉をものともせずに、幸せそうに触手で花びらを撫でている。
こっちも大分解りやすい。
二人…というか、一人と一体の奇妙な恋模様は、E組にとって普通になりかけている。
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