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□女体化柳宿ちゃん
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「あっ!?」
「は?」
それはいつも通り、宮殿で宛がわれた部屋で床に就こうとした時の事。
今日の同室は、翼宿と柳宿。この二人が同室になるのは、割と多い。

オカマの柳宿は部屋の中でも汐らしく、着替えをする時はいつも一枚布を挟んだ場所で行っている。
密かに彼に想いを寄せていた翼宿にとってその状況は面白くない訳だが、何かしようともすればいつもの鉄拳が飛んでくるのでそうさせざるをえない。

今日もいつも通り、柳宿が寝巻きに着替えていた時、そのすっとんきょうな声は聞こえてきた。
「何や?ゴキブリでもおったか?」
「ぶ…物騒な事、言わないでよ!何でもない…」
一枚布の向こう側で、柳宿は自身の胸板を見つめて唖然としていた。
いや。胸板ではない。
そこにはギリギリ女のものとも取れる、二つの僅かな膨らみがあった。
(これって…まさか…)
「おい。着替え、済んだんとちゃうんか?」
「ぎゃ!ちょっと待ってよ、まだだってば!」
遠慮もなしに布を捲り上げてきた翼宿に驚き、慌てて着物の前をかきあわせた。
帯を巻かず着物一枚の危なっかしい姿で停止している柳宿の姿に、翼宿はますます首を傾げる。
「何を、女みたいな事しとんねん。気持ち悪いなあ。帯…せんといかんちゃうんか?」
「そ、そうね…」
傍らに投げ出されていた帯をヒョイと取り上げ尋ねてくる相手に、どうにか冷静を取り戻しながら答える。
「してやろか?」
「っ!」
この状態で、一番まずい依頼。しかし…それを断る理由もない。
これ以上無駄な動きは出来ないと、柳宿は黙って頷いた。
向かい合いかきあわせた着物のあわせの腰部分から、翼宿が帯を巻いていく。
「お前…相変わらず、細い腰しとるな」
「つべこべ言わずに…さっさとやってよ!」
「へいへい」
腰の前でキュッと帯を結ぶと、最後に着物の襟を整える。
「出来たで。ったく…俺はお前の介添人やないっちゅうね…」
しかし、そこで翼宿の言葉は遮られた。
「あ、ありがとう。悪かったわね…」
着物のあわせから見えた、僅かな谷間…そして横を通りすぎた時に見えた僅かな膨らみに、翼宿は目を見開く。
「っ!おい!」
「何よ…きゃ!」
手荒く肩を引かれた事で、柳宿は寝台に尻餅をついた。
明らかに行為が始まる前のような艶かしい雰囲気に二人は頬を染めるが、翼宿の視線は柳宿の胸元から離れない。
「お前…これ…」
「ちょ!見ないでよ、変態!」
「いや…これが、見ずにはおられん状況やがな…」
「んなっ…!」

「女の体に…なったんか?」

ストレートに問われた質問に、柳宿は動揺しながらも首を縦に振る。
「どうしよ…何の魔法よ。朱雀の嫌がらせか何かなの…?確かに、朱雀に女にしてほしいって考えた事はあったけど…」
「……………」
「いつまで、見てんのよ!早くどいてよ…」
「なあ…よく、見せてくれんか?」
「は、はあ!?」
「正直に…見たい」
この男は女嫌いを豪語していた癖に、何を言っているのか?
唖然としている間にも、せっかく整えた着物のあわせに翼宿の手がかかる。
「ちょ…!見ても、何もないわよ!しかも…そんなに…大きくない…のよ。何の得にも…なりゃしない」
「ええやん。小さくても、柳宿は柳宿やろ」
「めっっっちゃ、ズレてる!その論点!」
ひとつの寝台の上で、口論を繰り広げながらも行われる攻防戦。
「おい、あんま暴れんなや…引っ掻いたりしたら、まずいや…ろ」
すると、弾みで翼宿の手があわせに侵入しその下の胸を鷲掴みにしてしまった
「…………っあ」
柔らかい感触に…先端の丸い突起。大きいものではないが、その手触りはまさしく女のもの。
しかし顔を真っ赤にした柳宿は、両目に涙を溜めながら翼宿を見上げている。
「柳宿…堪忍な。今のは…事故やさかい…」
「吹っ飛べ!エロ山賊!!」

ドッカン!!

「ん?今の…」
「どうした?美朱」
「ううん。何か、宮殿から隕石みたいなのが飛び出してったような気がして…」
「どうせ、また翼宿だろ。今日は、あの二人が同じ部屋だし」
「あ!そっか!その内、翼宿ホントに死んじゃったりしてね〜☆」
別室の美朱の予想通り、その日の翼宿の飛距離は過去最高。
生死は…確認できない。

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