解放王の歌姫と守護者

□お忍びとルシタニアの誘拐者
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パルス歴318年 王宮 噴水広場

噴水前に剣戟の音が響く。それを起こしているのは老人と少年。エーラーン・ヴァフリーズと王太子アルスラーン、12歳である。
圧倒的にヴァフリーズが有利。そして、剣が弾かれた。
「相変わらず強いな、ヴァフリーズは。私はまだまだだ。」
「そのようなことはありませぬぞ。殿下も十分上達なされております。」
ありがとう、とアルスラーンが微笑むと。
その肩に一羽の鷹が飛んできた。
万騎長・キシュワードの飼っている鷹、告死天使〈アズライール〉である。
「アズライール!おかえり。無事だったかい?」
そう問うと
「アルスラーン殿下、ご無事でなによりです。全く、主人より先に殿下に帰還の挨拶をするとは。相変わらず、こいつも告生天使〈スルーシ〉も殿下に懐いている。」
さて、万騎長ヴァフリーズ、ただいま帰還いたしました。今回も快勝ですぞ。あやつらもよく戦いました。」
「本当か!?」
キシュワードのいうあやつら、とはアルスラーンの弟弟子、妹弟子にあたるシーア、アストである。ヴァフリーズに3年前にサン・マヌエル近辺で見つけられ、その当時からかなりの武勇を誇っていた。あのダリューンに本気を出させ、かつギリギリで勝たせた相手である。そんな二人は自分たちの馬も育ち、馬上での戦にも慣れたゆえ、今回初陣となったのである。
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