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□君が為
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ぽっ....とともる行灯
主の手が白人戦で負った傷の手入れをする。

わざわざ構うなというものに構わなくてもいいものを
主は相当の変わり者なのであろう....

日頃の大倶利伽羅はといえば....
「 俺がどこに行こうが、俺の勝手だろ 」だとか
「 慣れ合うつもりはない 」
などとなんとも可愛い気も愛想のない。
そんな大倶利伽羅にすら主は優しい。
普通なら見放してもおかしくはないだろうに

その証拠に大倶利伽羅の手入れは他の刀剣らより丁寧だと思う。


「なぜだ?」
シン....とした部屋に大倶利伽羅の低い声がしっかりとつたわる。
まるで独り言を誰もいない部屋で言ったかのようだ。
「なにが?」
静かに、だが、しっかりと主は返事をする。

「なぜ俺なんかに構う。今剣や他の奴らの方を優先したらどうだ。俺はいつも
構うな といってるだろ。放っておいてくれ」

「でも、いやではないのでしょ?私は何時も出陣も手入れも強制はしてないわ。それでも行ってきてくれるし、手入れされにもくる.... それっていやではないってことでしょ?」

たしかに、主は刀剣の誰にも強制はしていない
優しいのだ
審神者にはふさわしくないほどだ
刀解や刀剣破壊、たかだか軽傷でさえ丁寧に丁寧に手入れをし、けして刀剣には無理はさせない
付喪神といえば聞こえはいいが、刀剣はやはり`物`には違いなく、主の主が命令一つで折ってしまえばただの鉄に戻る
そう考えれば優しすぎるのかもしれない

そんなことを考えているなど らしくない と大倶利伽羅が考えをやすめたころ

それに…
と主は悪戯っぽい笑顔でつづけた

「嫌よ嫌よもなんとやら…ですしね」

どうやら、主は優しいが大物になりそうだ。





君が為....
(この主のためならば嫌ではないな....)

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