光の先に望むもの

□個性の集まり
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「…ここか」

桜が咲き誇り舞い散る中、とあるうちの前で一人少量の荷物とともに立ち止まるものが一人。

「…人、多そうだな」

白髪に眼鏡をかけた彼の名は、三河詞音。彼の勤める会社の社長に言われてここへやってきたのだ。

「とりあえず…入るか」

意を決してドアノブへと手をかける。

「こんにちはー」

出迎えたのは、間延びしたゆるい声。

「やっほー。新規さんいらっしゃーい」

「初めまして。お世話になります」

ぺこりと頭を下げて挨拶をすれば、他の住人であろうもの達がわらわらと出てきた。

「いらっしゃい。こちらこそよろしくね」

「わあ…初めまして!よろしくです!」

「よろしく」

「また一風変わった子だね。よろしく」

「仲良くしましょうね!」

「よろしくねっ!!」

「よろしくです」

「よろしくね〜」


予想外にたくさんの人間が出てきて驚く詞音。自然と自己紹介が始まる。


「俺は下野紘。ここの大家だよ。分かんない事とかあったらなんでも聞いてね」

「私は藤堂遥輝。フリーターだよー。よろしく」

「宮野真守だよ!よろしく!!」

「稲沢桃花です!よろしくおねがいしますね!」

「梶裕貴です。よろしく」

「宇佐美日葵です!よろしくね!!」

「茶野麗華と言います!音大に通っています!よろしくです!!」

「鈴木達央。よろしく」

「僕は蒼井翔太って言います。よろしくね」



「三河詞音だ。よろしく」



いつものように淡々と挨拶を済ませる。住人の反応から見て、ちゃんと笑顔は作れているようだ。よかった。


「あんたの部屋は階段上がって奥の部屋ね。」

「家具とかは全部先に届いてたからもう入れてあるよ」

「…どうも」


ご丁寧に大体の準備まで済ませてあるらしい。することが減って楽でいい。


「荷物片してきます」


そう一言断って、自分の部屋へと上がった。





(シェアハウスか…社長め、俺がこういうところ苦手って分かってて入れがったな…)







心の中で愚痴りながら着いた部屋。さっき大家さん…下野さんが言っていたように家具は綺麗に置かれていた。


「…家具の配置完璧だな…」


そこまで多くないダンボールを開封しながら自分なりにアレンジしていく。


「これはここ…これは…」


置かれていくものの多くは大量の本。あっという間に小さな本屋のように大量の本がいたるところに鎮座していた。


「…爽快だな」


嬉しそうに少し頬を緩ませて本たちを一望する。
と、下からお呼びがかかった。


「詞音ちゃーん!お昼にしよう!!」


少し男にしては高い声…蒼井翔太って人か。と思いながら一階へと降りた。
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