短編

□生徒会長様あけおめ文2016
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「あ、はっぴぃにゅーいやー!」



秒針が12の文字にかかった途端、生徒会書記の英士が、パァン、とクラッカーを鳴らす。それを受け、生徒会副会長の順也が、ジュースの入った紙コップを上に掲げた。



「ハッピーニューイヤー、みんな。……って、寛貴、まぁだ拗ねてんのかよ。固くなるなよ、さんざ、今まで俺たちと遊んできたじゃねぇ」
「……」



俺が面白くない顔をしていたのが順也にもわかったのだろう。俺の肩を叩いてくるが、その手の感触につい俺はビクリ、と体を震わせる。



あの、衝撃に満ちた漫画を見てしまってから半月。さすがに無意味な警戒は薄れてきたが、大晦日恒例で行っていたこの四人の年越しパーティーは、またあの漫画の光景を呼び起こし、俺は警戒心が止まらない。



……あの漫画の最終章は、副会長、書記、会計が、3人により調教された会長を、深夜に誰も来ない生徒会室で乱交パーティーをするというもので。



……今、このパーティーの一室は、誰も来ない生徒会室。冬休みで生徒がいない学校はただでさえも人気がない。しかも年越しパーティーは当然だが深夜、……どうしてもあの最終章を思い出してしまう。



『ほうら、ヒロキ、まぁだ拗ねてんのかよ。固くなるなよ、さんざ、今まで俺たちと遊んできたじゃねぇ』
『……っ、でも、三人一緒なんて、今まで、』



俺が難しい顔をしていると、勇人が微笑しながら俺に言った。



「明けましておめでとう、寛貴。……今日くらいは羽目を外してみたらどうだ。お前も仕事、仕事できつい思いをしているだろう。俺もお前に楽しい思いをしてほしいんだ」
「………」



『ヒロキ、今日くらいは羽目を外してみたらどうだ。お前も仕事、仕事できつい思いをしているだろう。俺もお前に悦い思いをしてほしいんだ……体で、じっくり、な』
『ユ、ユウ、や、やだ、』



また思い出してしまった光景に重くため息をつきながら、俺は勇人に言った。



「……その甘えが命取りだとわからないか、勇人。俺たちは一瞬も息抜きなどしてはならないはずだ」
「……もー、ヒロったら、こんな時にまでかったいー。もう少しやわらかくいこうよー、今までだって仲良くしてきたんだしぃー。大体、ここにヒロだって来てんだから、ホントは楽しみにしてたんでしょー?」
「……」



『……もー、ヒロったら、こんな時にまでかったいー。もう少しやわらかくいこうよー。今までだって仲良くしてきたんだしぃー。大体、ここにヒロだって来てんだから、ホントは楽しみにしてたんでしょー?おれたちに可愛がられるのをさー?』
『あん、……エ、エイジっ!』



………毎回毎回、フラッシュバックされる淫靡な漫画のコマと似たような台詞の数々。そのたび内心びくつく俺だが、そんな俺の心中を当然知りもせず、三人は俺に気を使う。それがわかるから、俺は深夜のこのパーティーも断りたかったが断りきれなかったのだ。



………ああ、憂鬱だ。



あの漫画の記憶が薄れるまで、こいつら三人にびくつかねばならないのかと思うと、俺は憂鬱さに新年から大きくため息をつくほかなかったのだった。



・END・

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