長い物語
□殺人鬼
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序章
皆が寝静まった夜中。
こつ、こつ、こつ、
この時間には似つかわしくない、紺のセーラー服を身に纏った、また学生ぐらいの少女は一人で薄暗い公園を歩いていた。
こつ、こつ、こつ、
一っ子一人いない公園に彼女の足音だけが大きく響く。彼女は馴れた足どりで街の裏路地へ続く道を進む。
こつ、こつ、こつ、
首に巻いてある濃い赤のマフラーが彼女の足どりにあわせてはためく。血を思わせるような、濃い赤。
「お嬢ちゃん、どこ行くの?」
突然、後から声が聞こえた。
男だった。複数の男。
若いが薄汚い、明らかに何かよからぬ事を考えているような、そんな男達。
「おにーさんたちと…」
ぶすりっ
一人の男が何か言いかけたがそれは言葉にならなかった。
代わりにどこから出したのか分からない、少女の手に握られたナイフがその男の心臓を貫く。
ぶしゅっ
引き抜くと同時に血飛沫をあげ、地面に崩れ落ちるようにして倒れる。心臓の位置にある傷口から大量の血が流れだす。
鼻につく、鉄の臭い。
血の海。
返り血のついた少女。
ーーーまだ血の流れ続けている男の死体。
何が起こったのか分からなかった。否、分かりたくなかった。理解したくなかった。でも分かってしまった。理解してしまった。この少女が殺したのだと。自分たちもこうなるかもしれないのだと。
「────────!!」
声にならない悲鳴が漏れた。
「さぁお望みどうり、遊びましょうーーー?」
血飛沫がまたーー
ーーーーーーあがった。