薄桜鬼異聞
□元旦の朝
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元旦の朝。
なんだか、寒い。窓の外がやけに明るかった。
カーテンをあけて、思わずほおが緩んだ。
一面の銀世界だった。石灯籠を置いた築山が真っ白だ。
階段を降りて、洗面所に行った。総司兄上さまが眠そうな目で顔を洗っていた。
「あけましておめでとうございます。兄上さま」
挨拶する私に、兄上さまは寝ぼけた顔を向けた。
「うん、おめでとう」
高校三年生。ちょっとSっぽいところがいいと、私の同級生にも人気がある。
「他の兄上さまたちは起きてますか?」
「どうだろうね。夜中過ぎまで、酒宴してたみたいだから」
そういえば、騒ぐ声が奥の私の私室まで届いていた。
「歳三兄さんが怒鳴るかと思ったけど、大晦日だから大目にみたらしいよ」
ダイニングキッチンに行った。
一兄上さまが台所に立っていた。雑煮を作っているようだ。
「おめでとうございます」
挨拶してから、母のお梅がいないことに気づいた。
「お母上さまは❓」
「父上と会津藩に年賀に行かれた」
父の勇は会津藩のお預かりの新選組局長である。
ろくに呑めないのに、無理をして盃を重ねているのだろう。