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虚無に包まれる
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――ウタ、好きだよ
――大好き
「…分かってるよ……叶華」
水面を泳ぐ落ち葉のように揺らめく意識。
浅いまどろみの際にいた。
声が聞こえた。
愛しい人の声が。
春のような心地よい声で愛を囁いてくる。
それは呪いのように頭の中で響き渡る。
毛布の中で手を伸ばす。
ひらりと手は何もつかめない。
そこで漸く意識が浮上した。
「そっか……」
部屋を見回す前に気付く。
自分の隣が冷たいことに。
シーツを暖める人がもういないことに。
クスクスと小さな笑い声。
ぼんやりとした頭で回りを見る。
でも誰もいない。
そしてまた気付く。
自分にしか聞こえない声か、と。
頭の中に直接響いてくる叶華の声。
これは記憶。
かつて叶華にもらったもの。
これは幻。
自分の願望から生み出した紛い物。
((壊すばかりの手))== == == == == == == == == ==
続くといいな……。